馬毛島基地建設、工期延長=生活に影響、長期化懸念―鹿児島・種子島
鹿児島県西之表市の馬毛島で進められている航空自衛隊基地の建設工事が、予定より3年ほどずれ込む見通しとなった。開始から約4年後の2027年に完了するはずだったが、防衛省によると、悪天候や人手不足で30年3月末になる見込み。対岸の種子島では交通量の増加など生活に影響が出ており、島民からは懸念の声が漏れる。
馬毛島は種子島から約10キロ西にある無人島。防衛省は2本の滑走路や火薬庫を設けて南西防衛の拠点として整備し、米空母艦載機や空自F35B戦闘機の離着陸訓練に使う計画だ。
しかし、大阪・関西万博などの大型工事の影響で人手や資材の確保が難航。さらに悪天候で重機や資材を島に搬入する船が出せず、工期の延長を余儀なくされたという。
西之表市などによると、工事の関係者は最大約6000人に上る。馬毛島にも作業員宿舎を建設中だが、多くは種子島を拠点として、防衛省がチャーターした漁船などで通勤する。種子島の人口は3万人弱にすぎず、工事関係者が大挙して押し寄せたことで島民生活は一変した。
飲食店などは活況に沸くが、特に不動産関係で島民や移住希望者に大きな影響が出た。工事関係の需要で物件が不足し、家賃が高騰。観光面でも、ホテルや民宿が逼迫(ひっぱく)するなどした。
島内では工事関係者向けに、空き地に並ぶコンテナや、プレハブの仮設住宅などが目立つ。建設中のものもあり、こうした住宅への投資を募る業者もインターネット上に多く見られる。
時給が高い工事関係の求人に押され、地場産業は人手の確保に苦慮している。特に漁業は、作業員の送迎や現場警備に漁船を回す人が増えたことで、水揚げ高が2割ほど減少。ある島民は「スーパーに島産の魚を見なくなった」とこぼした。
工事車両で交通量が激増したことや、馬毛島で工事中の事故が続いたことも不安材料になっている。西之表市馬毛島対策室の職員は「良くも悪くも変化が大きい。工事が長引くほど、完了後の揺り戻しが気がかりだ」と話している。
[時事通信社]
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