マスク氏の極右支持が波紋=「選挙介入」、分断の火種に―独
【ベルリン時事】2月に総選挙を控えるドイツで、米実業家イーロン・マスク氏が極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」への投票を呼び掛け、波紋が広がっている。マスク氏は先月下旬、X(旧ツイッター)に「ドイツを救えるのはAfDだけだ」と投稿した。世論調査で支持率2位のAfDは一段と勢いづき、他党は一斉に反発。米大統領選を覆った分断の火種が欧州に持ち込まれた形だ。
マスク氏は独紙ウェルト日曜版にも寄稿し、AfDが掲げる規制緩和や反移民、原発再稼働などの方針を評価し、「政治的な現実主義だ。既存体制に無視されたと感じる人々の共感を呼んでいる」と称賛した。マスク氏はベルリン近郊に巨大工場を持つ電気自動車(EV)大手テスラの最高経営責任者(CEO)。自社の利益の追求がAfDを支持する理由の一つとみられ、同党のワイデル共同党首の周辺と「定期的な連絡」(独メディア)を交わしているとされる。
AfDは反国家的活動家との近さから公安当局の監視下にあり、政界で異端視されている。排外主義や欧州連合(EU)からの離脱も辞さない姿勢は、産業界と相いれないとの見方が一般的。しかし、世界トップの実業家による「お墨付き」は追い風となっている。
総選挙に向けて劣勢を強いられている中道左派与党、社会民主党(SPD)のショルツ首相は、新年の国民向け演説で「ドイツのことを決めるのは国民だ。ソーシャルメディアのオーナーではない」とXを傘下に持つマスク氏への不快感をあらわにした。保守系野党キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)を率い、次期首相の座に最も近いメルツCDU党首は「友好国に対するこのような選挙介入は記憶にない」と批判した。
マスク氏はドイツ以外の欧州の右派政治家とも交流を深めている。イタリアの極右政党「イタリアの同胞」党首のメローニ首相と密接な関係を構築。英国の右派ポピュリスト政党「リフォームUK」に巨額献金を行うとの見方も強まっている。トランプ次期米大統領の盟友であり、莫大(ばくだい)な資金を持つマスク氏の動向は今後、欧州政界で注目を集めそうだ。
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