石破政権、続く難路=参院選へ与野党攻防激化―予算採決、最初の関門・25年政局
少数与党を率いる石破茂首相の政権運営は、2025年も難路が続きそうだ。1月24日召集で調整している通常国会は25年度予算案の早期成立が最大の課題。野党の協力を得られるかが焦点で、衆院採決が迫る2月下旬以降が最初のヤマ場となる。派閥裏金事件への対応も含め、夏の参院選をにらんで与野党の攻防が激化する見通しだ。
◇国民・維新がカギ
「丁寧に説明し、野党に賛成していただける環境を醸成したい」。首相は24年12月27日、予算案の閣議決定を受けて記者団にこう強調した。
自民、公明両党は先の臨時国会で、国民民主党が主張する所得税の課税最低ライン「103万円の壁」について「178万円を目指し来年から引き上げる」と約束。日本維新の会とは教育無償化に関する協議で合意し、両党の賛成を得て24年度補正予算を成立させた。25年度予算案も両党との「部分連合」が基本戦略となる。
年収の壁見直しを巡り、自民は12月、大幅な税収減が懸念されるとして123万円を提示した。しかし、玉木雄一郎代表(役職停止中)は年末のインターネット番組で「123万円のままでは確実に予算に反対」と178万円に向けて上積みを要求。榛葉賀津也幹事長は記者会見で、衆院通過まで「ひりひりする交渉が続く」と予告した。
維新とは教育無償化に関し、2月中旬に結論を得ることで一致。首相は民放番組で、合意した場合の予算案修正に言及した。ただ、維新には「補完勢力と見なされたら参院選は戦えない」(ベテラン)として予算案賛成に慎重論がくすぶる。
一方、立憲民主党は予算審議を通じて石破政権を揺さぶる方針だ。裏金事件の実態解明に向け、旧安倍派の会計責任者(当時)の予算委員会招致が必要だと主張。衆院予算委員長ポストは立民が握っており、与党が拒否し続ければ予算審議への影響は避けられない。
立民は24年度補正予算と同様に、25年度予算案の修正を求める構えも見せている。野田佳彦代表は12月27日の党会合で「通常国会では存在感のある野党第1党の姿を示す。勝ち取るものは勝ち取る」と語った。
予算審議と並行して進む見通しの政治改革論議も政権運営の火種だ。自民、立民両党は企業・団体献金の扱いについて3月末までに結論を得ることで合意したが、自民は存続、立民は禁止を主張し、溝は埋まっていない。ある自民参院議員は「予算が無事に成立するとは思えない」と身構える。
◇「石破降ろし」予想も
予算審議を乗り切っても、首相の政権運営の安定は見通せない。24年10月の衆院選後に首相の退陣論が広がらなかったのは、25年度予算案の審議などが控えていたことが大きい。内閣支持率が低迷したまま予算成立を迎えれば、参院選への危機感が一気に噴出する可能性も否定できない。
先の総裁選での敗北後、政権批判を控えていた高市早苗元政調会長は12月発売の月刊誌で、衆院選で「裏金候補」が非公認とされたことを「とんでもなくひどい」と批判した。自民関係者は「参院選が近づけば石破降ろしの動きが出てくる」と予想した。
25年後半の政局を大きく左右するのが参院選だ。参院選は通常国会の会期延長がなければ「7月3日公示―20日投開票」が有力。与党は改選124議席のうちの50議席を獲得し、非改選議席と合わせて過半数を死守したい考えだ。衆院に続いて参院でも過半数を割り込めば、政権運営に行き詰まる可能性があるためだ。
参院選の前哨戦となりそうな6~7月の東京都議選の行方も焦点。与党にとっては都議会自民に浮上した裏金疑惑が拡大するかが気がかりだ。
首相が衆参同日選に打って出る可能性も取り沙汰される。首相は12月28日のテレビ番組で、内閣不信任決議案が可決されるなどした場合の衆参同日選の可能性を問われ、「ありますよね」と語った。ただ、与党内では「有権者の理解を得られない」(自民中堅)などと慎重論が強い。
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