所得税控除、上げ幅焦点か=10万円で1兆円税収減も
自民党は6日、税制調査会の幹部会を開き、衆院選で躍進した国民民主党が主張する所得税の控除拡大について議論を始めた。国民民主が求める一律75万円の引き上げにどこまで応じるかが、今後の焦点になるとみられる。仮に一律10万円引き上げれば、国と地方で計約1兆円の税収減になるとの試算もある。
国民民主は公約で、「103万円の壁」と呼ばれる所得税の基礎控除と給与所得控除の合計額を、最低賃金の伸びに合わせて178万円まで上げるよう主張。非課税範囲を意識し、年収が103万円を超えないように働くパート従業員らがいる現状では、賃上げ効果がないとの考えだ。玉木雄一郎代表は、「(自民が)全くやらなければ予算案も法律案も通らない」と自民に突き付ける一方で、具体的な引き上げ幅は議論の余地があるとも示唆している。
政府は、国民民主の公約通り控除を一律75万円引き上げると、国と地方の合計で税収が約7兆6000億円の巨額の減収になると見込む。ただ、物価や平均賃金を上回る伸びとなる最低賃金に連動させ、控除を拡大することへの疑問の声もある。第一生命経済研究所の星野卓也主席エコノミストは、「生活費の物価に合わせれば、必要最低限の生活費には課税しないという基礎控除の趣旨との乖離(かいり)が少ないのではないか」と指摘。食料品の消費者物価を指標とする例を挙げ、この場合は140万円への引き上げになると試算した。
野村証券の桑原真樹シニア金利ストラテジストは、年収655万~836万円の人は年間15万円の減税になると試算。減収額1兆円の場合、一律10万円の控除引き上げになると見込む。コロナ禍以降、高水準で推移する国債発行額が、減税規模によっては今年度を上回る可能性もあるため、「市場の注目点にもなる」と話している。
[時事通信社]
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