「夫に言う必要なし」 ハリス氏陣営、選挙CMで女性有権者に訴え
【ワシントンAFP=時事】米大統領選の投票所へやって来た夫婦。揃いの野球帽は、共和党候補ドナルド・トランプ前大統領の支持者に人気がある米国旗の柄だ。≪写真は、ニューヨークの投票所で投票する女性≫
夫は妻もトランプ氏に投票すると思っている。だが、妻は民主党候補カマラ・ハリス副大統領に投票する。ここで俳優ジュリア・ロバーツさんのナレーション。「投票ブースの中の出来事は、ブースの中だけのこと」
妻は投票前に別の女性有権者と目くばせをする。ナレーションは「あなたは自由に投票でき、誰にも知られることはない」と語る。夫が「正しい候補に入れた?」と尋ねると、妻は「もちろん」と答える。
ハリス陣営が制作したこの30秒の選挙CMに、トランプ陣営は猛然と反発した。当のトランプ氏は「ばかげている」「妻が誰に投票するかを夫に言わないなんて想像できるか?」といきり立った。保守系テレビ局FOXニュースの司会者は、妻が夫に秘密でハリス氏に投票するのは「浮気と同じだ」と批判した。
■前例のない男女差
トランプ陣営の激しい反応は、今回の米大統領選における二つの重要な側面を表している。
一つは、米現代史上最も接戦となる大統領選で、両氏が最後の一票まで争っていること。
もう一つは、その大激戦の中で、ハリス氏が女性票を大きく頼りにしていること。今回の大統領選ではかつてない男女差が生じると予想されている。
全米ネットワーク局NBCテレビの最新の世論調査によると、ハリス氏は女性有権者からの支持で16ポイント上回っており、一方のトランプ氏は男性有権者からの支持で18ポイント上回っている。
この前例のない男女差は、2022年に米最高裁が人工妊娠中絶を憲法上の権利と認めた判決を覆す判断を下したことと、それを受け、ハリス氏が選挙運動の前面にリプロダクティブ・ライツ(性と生殖に関する権利)を打ち出していることが関係している。
■男性版の「隠れ支持者」CMも
米ラトガース大学のケリー・ディットマー教授(政治学)はより広い視点から、今回の大統領選はトランプ氏が掲げる「伝統的で家父長的な男らしさ」と、ハリス氏が掲げる「精査に基づく役割のステレオタイプな性別役割にとらわれない」政策の衝突だと見ている。
民主党のハリス氏支持を公言している、共和党のディック・チェイニー元副大統領の娘で、元下院議員のリズ・チェイニー氏は今回、ハリス氏への「秘密の」投票が数多くあると睨んでいる。
チェイニー氏は「正直なところ、男性も女性も多くは投票ブースの中で良心に従い、ハリス副大統領に投票すると思う」「有権者が何かを言わなくても、結果が物語るだろう」と語った。
他方でバラク・オバマ元米大統領の妻ミシェル氏も最近、女性有権者に対し、「もしも、あなたの話に耳を傾けない男性たちと暮らしていても、投票は自分だけのものであることを忘れずに」と述べている。
「隠れ支持者」を取り込もうとするハリス陣営のCMには男性版もある。女性版CMのスポンサーとなった宗教系NPO「ボート・コモン・グッド」は、トランプ氏支持者の友人に内緒でハリス氏に投票する2人の男性有権者を描いたバージョンも公開した。
男性版のナレーションは、ロバーツさんと同じくハリウッドスターのジョージ・クルーニーさんが担当している。【翻訳編集AFPBBNews】
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