静観の中国、内心いら立ち=北朝鮮のロシア派兵
【北京時事】ウクライナへの侵攻を続けるロシアを支援するための北朝鮮の派兵について、同国の最大の「後ろ盾」である中国は完全に蚊帳の外に置かれた。習近平政権は表向きは静観し続けているが、北東アジアの安全保障環境の不安定化につながりかねないロ朝の結束強化に、内心いら立ちを強めているとみられる。
「朝ロが関係をどのように発展させるかは両国の問題だ。中国は具体的な状況を把握していない」。中国外務省の林剣副報道局長は1日の記者会見でこう述べ、距離を置く姿勢を強調。北朝鮮の行動に歯止めをかけるため、中国に影響力の行使を求める米国やウクライナのゼレンスキー大統領の訴えを暗に突っぱねた。
習国家主席は先月下旬、ロシアで開催された新興国グループ「BRICS」首脳会議に出席し、プーチン大統領と会談。ウクライナ危機の仲介役を自任する習氏は、首脳会議で「戦場を拡大させず、激化させず、各国は火に油を注がない」という「3原則」を主張した。ほぼ同時期に進められた派兵は、その習氏の顔に泥を塗った形だ。
北京の外交筋は「中国は派兵に関して事前通知を受けておらず、驚いているだろう。各国が想像するほど中国は(北朝鮮への)影響力を持っていない」と分析した。
習政権はかねて、ロ朝の急速な接近に不満を抱いていたと指摘される。中国にとって、北朝鮮に対する発言力が低下したり、朝鮮半島情勢が緊迫化することで日米韓の安全保障連携が強まったりする展開は望ましくない。北朝鮮の参戦は、習政権が敵視する北大西洋条約機構(NATO)がアジアの安保への関与を強めるきっかけにもなり得る。
中朝は今年、国交樹立から75年の節目を迎えた。亀裂は広がりつつあるが、年内には「友好年」を締めくくる記念行事があるとみられている。北朝鮮の高官が訪中する可能性もあり、先の外交筋は「行事をきっかけに中国がもう少し影響力を行使するのか、注視している」と話した。
[時事通信社]
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