プラごみ汚染、北極でも=影響深刻、規制強化の動き―国際社会、条約制定へ・第3部「未来が見える場所」(4)・〔66°33′N=北極が教えるみらい〕
北極圏は世界で最も人口密度が低い地域の一つだが、暖かい場所から流れ着くプラスチックのごみは、容赦なく北の海をむしばんでいる。世界のプラスチック生産量が激増する中、不適切に捨てられたごみが、深刻な海洋汚染をもたらしている。特に微細な「マイクロプラスチック(MP)」の問題は北極圏でも顕在化。海洋生物の健康を脅かしており、世界は規制強化に動く。
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◇年180億個が流入
経済協力開発機構(OECD)によると、2019年の世界のプラ生産量は4億6000万トン。00年の倍以上に増えた。廃棄量も年間3億5300万トンに上り、新たな対策が講じられなければ、50年には重さベースで海洋中のプラが魚の量を上回る試算もある。
海に流出したプラは、波に洗われて砕けるなどして5ミリ以下のMPとなり、1~3年漂って海底に沈むとされる。自然界では分解されず、有害物質を吸着しやすいため、食物連鎖を通じて海洋生物に蓄積。生態系への影響が懸念される。
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北極圏では、緯度の低い地域から海流や大気で運ばれたMPが海氷や雪からも検出。海洋研究開発機構(JAMSTEC)によると、北極海の太平洋側には年間180億個のMPが流入していると推定される。海氷は海水より高濃度で蓄積され、魚や微生物、ホッキョクグマなどの野生動物に悪影響を及ぼす恐れがある。
北極は温暖化による海面上昇など気候変動の影響が世界でも特に大きく、JAMSTECの池上隆仁副主任研究員はこのエリアについて「既に(温暖化による)環境ストレスを強く受けており、少ない量でも(MPによる)ダメージが大きくなる可能性が高い」と警鐘を鳴らす。
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◇国際的な規制の動き
プラ汚染を食い止めようと、22年の国連環境総会で国際条約を制定することが決まった。約170カ国が参加し、今年11~12月の韓国・釜山での会合で合意を目指す。焦点は生産規制だ。欧州連合(EU)などは、世界一律で制限し、総量抑制を訴えるが、生産大国の中国や産油国が反対。日本は各国の事情に応じた対策を主張する。
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池上氏は条約による規制を歓迎。海洋プラの減少や北極研究の前進につながることを期待する。一方で北極海について「他の海とは、プラの動きも生態系の気候変動に対する反応も違う」と指摘。北の海に特化した対策を訴える。
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▽ニュースワード「マイクロプラスチック」
直径5ミリ以下の微細なプラスチック。(1)洗顔料や化粧品など最初から細かいもの(2)捨てられた後に風や波、紫外線などでぼろぼろになり生じるもの―とがある。世界全体で少なくとも毎年800万トンが海に流出するとされる。
ポリ塩化ビフェニール(PCB)やダイオキシンなどの有害化学物質を吸着しやすく、魚や微生物など海洋生物の体内に蓄積すると、成長の妨げや繁殖力の低下につながる。人間の臓器や血液から検出された例もあり、健康影響が懸念される。
[時事通信社]
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