トランプ氏に「外交哲学ない」=ハリス氏は現政権の政策踏襲―ボルトン元補佐官に聞く・米大統領選
【ワシントン時事】11月の米大統領選で返り咲きを目指すトランプ前大統領の国家安全保障担当補佐官を務めたジョン・ボルトン氏は22日、インタビューに応じた。トランプ氏が掲げる米国第一主義の外交について「哲学や安保に関する包括的な見解がない。その場しのぎ、エピソード的で損得勘定に基づいている」と痛烈に批判した。一問一答は次の通り。
―トランプ氏の政策は「トランピズム(トランプ主義)」と呼ばれているが、外交的な意味は。
トランピズムに実体はない。彼は「政策」という言葉が通常意味するものを理解していない。戦略には長期的な思考が必要だが、彼は連続性のある決定を下さないため、効果的な安保政策を打ち立てられない。最後までやり抜く覚悟が米国にあるのか、同盟国は信じるのが困難になる。
―バイデン大統領は「孤立主義」と批判している。
トランプ氏の主張は首尾一貫していないが、米国が国際情勢における大きな役割を投げ出す傾向という意味で、古典的な孤立主義に当てはまる。トランプ氏がそれを理解していなくても、米国にとって大きな誤りだと思う。
―トランプ氏が勝利した場合の対日政策は。
在日米軍駐留経費の日本側負担(思いやり予算)増を再び要求するのは確実だと思う。日本としては、国内総生産(GDP)比2%の防衛費確保に取り組んでいる点を明確に示すことが重要だ。
―対中政策の展開は。
中国がトランプ氏の復活にどうアプローチするかで、多くのことが決まる。トランプ氏が勝利を宣言すれば、習近平国家主席は翌日に電話をかけ、バイデン政権下で多くの問題が生じたので、私とあなたの間で解決しようと持ち掛ける可能性が高い。トランプ氏は史上最大の貿易協定を結べるという誘惑に駆られ、これまでの対中批判を撤回するかもしれない。
―日米豪にインドを加えた枠組み「クアッド」などは維持されるか。
北大西洋条約機構(NATO)のような多国間であれ2国間であれ、彼は「同盟」の意味を分かっていない。中国に対し融和的になって、世界中の同盟関係が危機に陥る可能性を懸念している。
―民主党のハリス副大統領の外交・安保政策での不安材料は。
3年半も副大統領を務めているのだから、国家安保に関する多くの情報を得ているはずだが、彼女自身の考えは分かっていない。メディアの質問にも詳細に答えていない。(大統領になれば)最初の1年間はバイデン政権と非常に似た行動を取る可能性が高い。
―トランプ氏はウクライナ支援に反対している。
問題なのは、米国とNATOのウクライナ支援は逐次投入であり、戦略的かつ体系的でないため、紛争がこう着状態に陥っていることだ。ただ、トランプ氏が大統領に就任すれば、ウクライナは領土放棄を余儀なくされるかもしれない。欧州で侵略行為を阻止する努力をしなければ、アジアでも(侵略が)許されると考える人がいるだろう。
[時事通信社]
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