父の強権、親中路線踏襲=在日活動家も弾圧対象に―フン・マネット政権1年・カンボジア
【バンコク時事】カンボジアのフン・マネット首相が新政権を発足させてから1年以上が経過した。父のフン・セン前首相が進めた強権政治や親中路線は踏襲され、反対派への弾圧は在日活動家らも対象になっている。専門家は「民主化を支援してきた日本は、政治的自由を保障するようカンボジアを粘り強く説得するべきだ」と指摘した。
フン・セン氏は昨年7月、下院総選挙で与党・カンボジア人民党が圧勝した直後に38年間務めた首相を退任して息子に「世襲」すると表明。同8月22日にフン・マネット氏を首相とする新政権が発足した。ただフン・セン氏は人民党党首にとどまり「院政」を敷くとともに、今年4月には国王不在時に国家元首代行を務める上院議長に就いて権力の集中化を進めている。
フン・セン前政権は2010年代以降、中国に傾斜して投資と援助を呼び込み経済成長を成し遂げた。カンボジア政治が専門の新潟国際情報大学の山田裕史教授によると、欧米への留学経験があるフン・マネット氏は外交の多角化を模索し、中国を最重要視しつつ欧米との関係改善や日本との関係強化も図っている。
フン・セン氏は17年、政権に批判的な最大野党・救国党党首の逮捕や解党を強行し、昨年の総選挙では同党の流れをくむキャンドルライト党を排除するなど独裁体制を強化。フン・マネット氏にはより民主的な対応を期待する声もあったが、山田氏は「国境を越えた弾圧が増加するなど前政権よりも状況は悪化したという声がある」と指摘する。
今年5月、日本での党員集会でカンボジア政府を批判した野党・国民の力党党首が帰国直後に社会的混乱を扇動した容疑で逮捕された。8月には野党を支持する在日カンボジア人グループ代表の弟がカンボジアで逮捕された。
山田氏は「反対勢力への弾圧強化は、フン・セン氏が表舞台から退いた後も現政権の安定を維持することが目的とみられる。1990年代からカンボジアの民主化を支援してきた日本は、政治的な自由の保障と野党も参加した公正な選挙の実施を求めるべきだ」と強調した。
[時事通信社]
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