敵対意識植え付け結束図る=北朝鮮、韓国の「無人機侵入」を連日非難
【ソウル時事】北朝鮮が今月に入り、韓国の無人機が平壌に侵入したと連日批判を展開し、緊張を高めている。16日付の朝鮮労働党機関紙、労働新聞は1面で「重大な主権侵害に怒った全国の140万人の青年、学生が軍への入隊や復隊を嘆願した」と報道。体制側には、住民に韓国への敵対意識を植え付け、内部の結束を図る意図があるとみられる。
北朝鮮は11日から無人機侵入を非難し始めた。韓国軍は、無人機飛行の事実を確認できないとするが、民間団体が送った可能性もある。
韓国大統領府の高官は「住民が脅威を感じてこそ体制は生き残るが、北朝鮮の若い世代は脅威を信じていない」と指摘。平壌の防空網が破られたと住民に悟られるマイナス面があるにもかかわらず、体制側が無人機の危険を強調している現状について「それだけ北朝鮮内部が揺らいでいることを示している」と分析した。
韓国統一省の調査では、脱北者の8割が北朝鮮でUSBなどを使い韓国ドラマをはじめとする域外の映像を見たことがあると回答。8~9月には南北の境界を越えて韓国に脱北した事例が3件続けて判明した。
金正恩総書記は長年の方針であった南北統一を放棄し、韓国を「敵対国」とする路線転換を進めている。今月15日には韓国につながる南北軍事境界線近くの道路と鉄路を爆破。労働新聞は「主権を侵犯した韓国のくずを懲罰し、敵を撃滅させる意志が全国にあふれている」とあおり、韓国との「悪縁」を断ち切ると宣言した。
正恩氏の妹、金与正党副部長は15日の談話で、無人機侵入に絡み「挑発者は厳しい代価を払うことになるだろう」と今後の軍事行動を警告した。韓国政府系シンクタンク、世宗研究所の鄭成長・朝鮮半島戦略センター長は、無人機の侵入が続けば「北朝鮮が強力な挑発を行う可能性が高い」と予測。軍事境界線付近での砲撃といった局地的攻撃への懸念を示した。
[時事通信社]
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