ハリス氏、女性票確保に苦闘=中絶「決着済み」、争点化不発―激戦ミシガン州・米大統領選
11月の米大統領選で勝敗のカギを握る激戦州の中西部ミシガン州は、全米で最も女性の政界進出が進む州の一つとして知られる。民主党のハリス副大統領は、人工妊娠中絶を主要な争点に掲げて女性票の確保を狙う。しかし、中絶の権利が既に保障された同州では「決着済みの問題」との受け止めも広がっており、経済などで攻勢に出る共和党のトランプ前大統領に対抗する戦略は、空回り気味だ。
◇2年前に住民投票
「中絶は今年の争点ではない。もう決まったことなのだから」。ミシガン州の中でも特に民主、共和両党が激しく競り合うケント郡のグランドラピッズで、クリスティ・ヒューイットさん(53)はこう強調した。今回の選挙では経済や移民対策を重視し、トランプ氏に投票する意向だ。
実際、ミシガン州の有権者は2年前に決着をつけた。2022年6月に連邦最高裁が中絶の憲法上の権利を否定する判決を出すと、ミシガン州では同年11月の中間選挙に合わせ、中絶の権利を州憲法に明記する改正案が発議された。住民投票で賛成派が57%で勝利し、23年4月にはウィットマー知事(民主党)の署名で中絶を禁止する過去の法律は廃止された。
ミシガン州では、知事、州務長官、司法長官の三つの主要ポストを全て女性が占める。しかし、初の女性大統領を目指すハリス氏の主張に、必ずしも共感が広がっているわけではない。
医療政策調査機関KFFがミシガン州の女性有権者を対象に今年5~6月に実施した世論調査で、大統領選の関心分野に中絶を挙げた女性の割合は10%にとどまり、60%が「決着済み」と回答。トップはインフレの40%だった。22年の調査では、7割強が投票で中絶を重視していた。KFFのアシュリー・カージンガー副ディレクターは「ミシガン州の女性たちにとって経済の方が中絶より差し迫った問題だ」と指摘した。
◇共和は取り上げず
共和党は経済や移民などに焦点を当て、民主党が争点化を図る中絶問題を取り上げない姿勢を貫いている。共和党の上院議員候補マイク・ロジャース氏は中絶問題への対応を問われ、「当選してもミシガン州の人々が下した決定を覆すことは一切しない」とかわしている。
グランドラピッズ郊外で9月末に演説したトランプ氏は、中絶には一切言及せず、時間の大半を地元の自動車産業の振興に割いた。「全ての工場を取り戻す。60年前のように繁栄するだろう」と語り、聴衆を沸かせた。共和党ケント郡のジョン・ショート会長は「機運は高まっている」と手応えを感じている。
大統領選が佳境に入る中、危機感を募らせた民主党は中絶に再び焦点を当てるべく、テレビやインターネットで大規模な広告の配信を開始。州内各地で中絶問題に関するイベントも頻繁に開催している。民主党陣営関係者は「全国レベルで中絶禁止法が成立すれば、われわれの権利も失われる」と女性有権者に警告している。
政治サイト「リアル・クリア・ポリティクス」がまとめた各種世論調査の平均によると、ミシガン州での支持率は9日時点でハリス氏が48%、トランプ氏は48.5%。大接戦のまま最終盤に突入した。
[時事通信社]
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