中国、「和平の使者」演出=仲介外交で途上国糾合図る―ガザ衝突1年
【北京時事】パレスチナ自治区ガザでイスラエルとイスラム組織ハマスの武力衝突が始まってから1年となる中、中国は「仲介外交」を掲げて中東への関与を強めている。習近平政権は、自国を地域紛争における「和平の使者」として演出。米国やイスラエルに反発するアラブ諸国や新興・途上国の支持を取り付けたい考えだ。
習政権は当初、ガザの衝突に中立的な立場を標ぼうしていたが、戦闘の激化に伴いパレスチナ寄りの姿勢を鮮明にしている。王毅共産党政治局員兼外相は先月、訪問先の米国で、レバノンへの攻勢を強めるイスラエルを強く非難し、「中国はアラブの兄弟の側に立つ」と明言した。
中国は米国によるイスラエル支援が「(中東情勢で)火に油を注いでいる」(官製メディア)と繰り返し批判してきた。一方で、7月にパレスチナの主流派組織ファタハやハマスなど各派を北京に招き、「和解協議」を開催。各派は「分断の終結」をうたう宣言に署名した。
ファタハとハマスは長年対立しており早期に和解が実現する可能性は低いが、習政権は「対立をあおる米国」と「和平を進める中国」というイメージを広めようとしているもようだ。昨年3月に中国の仲介でイランとサウジアラビアが関係修復に至ったことは、習政権の自信につながっている。
中国の宣伝工作は一部で功を奏しつつある。パレスチナのシンクタンク「パレスチナ政策調査研究センター」がガザ住民らを対象に行った9月の世論調査で、中国の中東政策を「評価する」との回答が26%に達した。中東以外の国・機関では国連の13%などを上回り、最も多かった。問題解決へ向けた中国の関与拡大を「歓迎する」との答えも57%に上った。
シンガポールの「ISEASユソフ・イサーク研究所」が東南アジア10カ国を対象に実施し4月に公表した調査では、米中いずれかに同調を迫られた場合に「中国を選ぶ」とした回答が過半数を占め、初めて「米国」を超えた。イスラエルを擁護する米国にイスラム教徒が多い域内諸国が反発し、中国への傾斜を招いたとの指摘がある。
習政権はウクライナ問題においても、ブラジルなど多数の新興・途上国と連携。米国との対立が続く中、各国を糾合する手段として仲介外交を今後も各地で推し進める方針だ。
[時事通信社]
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