ガザの建物、6割超が損壊=「復興想像できない」―国連・ガザ衝突1年
1年に及ぶイスラエル軍の攻撃で、パレスチナ自治区ガザの医療、教育施設といったインフラが深刻な被害を受けている。国連衛星センターは今年9月、衛星画像の分析に基づき、建物の約66%に当たる16万3778棟が損壊したと公表。ガザを視察した国連児童基金(ユニセフ)広報官は「復興を想像することができない」と悲痛な声を上げる。
子供たちの学ぶ機会も奪われたままだ。国際的な支援団体「グローバル・エデュケーション・クラスター」の調査によれば、9月時点でガザの学校の94%に被害が出ている。半分以上が直接攻撃されたという。
使用できる校舎は避難所として住民が押し寄せているが、イスラエル軍は、戦闘員が潜んでいたなどと主張し、学校への攻撃を繰り返してきた。
9月にも避難民がいた中部ヌセイラトにある学校が空爆を受け、18人が死亡。国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)によれば、昨年10月以降で同校が攻撃されたのは5回目。グテレス国連事務総長はX(旧ツイッター)で「ガザで起きていることは到底受け入れ難い」と糾弾した。
9月下旬にガザからオンラインで時事通信のインタビューに応じたユニセフのジェームズ・エルダー広報官は、テントで仮設校舎を提供しているものの「攻撃のたびに何度も避難を余儀なくされる」と説明。十分な教育を受けられない世代が出てくることに強い懸念を示した。
世界保健機関(WHO)によると、ガザにある36病院のうち、17カ所が部分的に稼働しているものの、通常体制で機能している病院はゼロだ。特に、ガザ最大のシファ病院を巡っては昨年11月、イスラエル軍が地下にハマスの司令部があるなどとして制圧。今年3月にも、再びハマスが拠点化した見なし突入作戦を実行した。
医療・衛生環境の悪化により、ガザでは今夏、約25年ぶりにポリオ(小児まひ)の感染例が確認された。エルダー氏は「ガザの人々は、地上では疾病という攻撃にさらされ、空からは爆撃にさらされている」と指摘。「これほどの破壊は見たことがない。物理的のみならず、人々の心まで荒廃させている」と強調した。
[時事通信社]
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