中国投資、受け入れ拡大模索=貿易赤字拡大で、安保とジレンマ―インド
【ニューデリー時事】インドが中国企業による直接投資の拡大を模索している。国境問題で対立する中国からの投資受け入れには厳しい制約を課してきたが、対中貿易赤字の膨張や国内製造業の弱さを背景に容認論が浮上しつつある。ただ、経済と安全保障のはざまでジレンマも抱えている。
「中国から輸入するより、中国企業に投資してもらい、その製品を輸出する方が効果的だ」。インド政府のナゲシュワラン首席経済顧問は7月の年次経済報告で、欧米企業が製品調達先を中国以外に求める流れが強まる中、中国からの投資を増やし、利益を得るべきだとの見方を示した。
地元メディアは8月、電子機器受託製造(EMS)大手、立訊精密工業(ラックスシェア)など中国企業による「5~6件」の電子産業部門の投資案件が承認されたと伝えた。インド国内のサプライチェーン(供給網)拡大のため、投資を認めるよう業界から圧力が高まっていたという。
インドは2020年、中国を念頭に置き、国境を接する国からの投資に政府の事前承認を義務付けた。同年インド北部の係争地で両軍が衝突し、死者が出たこともあり、中国からの投資提案の多くを拒絶してきた。
しかし、課題だった貿易面での対中依存は脱却できず、中国は依然最大の輸入相手国だ。23年度の対中貿易赤字は前年度比2.3%増の約850億ドル(約12兆6000億円)。特にスマートフォンなど電子機器の多くを中国に頼っていることが大きく、大幅な輸入超過が続いている。
一方、政府内では否定的な意見も根強い。ゴヤル商工相は7月末、「中国からの投資を支援するため、(従来の方針を)考え直すことはない」と強調した。
カンタ元駐中国大使は地元紙への寄稿で、国境問題が未解決のまま経済関係を正常化させることに疑問を呈した上で、「安保と産業発展の両立を念頭に置かなければならない」とくぎを刺した。
[時事通信社]
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