イスラエル、報復対象見極め=イラン石油施設や要人も標的か―「強力な攻撃」示唆
【エルサレム時事】イスラエルはイランが弾道ミサイル約200発を発射した攻撃への報復を明言し、対象や規模を慎重に検討している。イスラエル国内では強力な報復を求める声が上がる一方で、最大の支援国・米国は反撃に理解を示しつつも大規模な攻撃に否定的だ。報復に伴う被害次第で、イランとの本格的な衝突や中東の戦火拡大に発展しかねない重大な局面を迎えている。
▽迎撃網突破か
イランは攻撃が「軍事・治安関係施設のみが標的」(アラグチ外相)と主張。イスラエルも大半を迎撃したとして詳細な人的被害などは明かさず、ネタニヤフ首相は「失敗だった」と断じた。
ただ、米メディアが報じた衛星画像では、イスラエル南部ネバティム空軍基地に着弾したミサイルで建物や滑走路が損壊。イランは初めて極超音速ミサイルを使ったとされ、一部が迎撃網をすり抜けて被害を招いた可能性もある。中部テルアビブ近郊の対外情報機関モサド本部近くにも着弾したと伝えられる。
ハレビ軍参謀総長は「イランは多数の市民の命を脅かした」と非難。「重要な標的を見つけ、精密かつ強力に攻撃する方法がある」と述べ、イランの主要施設や要人を狙う意向を示唆した。
▽核関連には慎重
報復の対象としては、イランの石油関連施設が浮上している。イランは原油確認埋蔵量が世界4位で、原油や関連製品の輸出は、制裁で疲弊したイラン経済を支える重要な収入源だ。石油精製施設や原油積み出し港などへの攻撃は大きな打撃となる。バイデン米大統領は3日、石油施設攻撃を支持するかとの記者団の質問に「それを協議している」と明言を避けた。
イラン核関連施設への攻撃を促す強硬な意見もある。ネタニヤフ氏はかねてイランの核開発を警戒し、イスラエルの存亡に関わるとしてイラン核武装阻止を掲げる。
イランの核施設はこれまでもイスラエルの関与が濃厚な破壊工作を受けてきた。だが、多くは地下深くで攻撃は難しく、強行すればイランとの全面戦争を招く恐れもある。米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は2日に複数のイスラエル当局者の話として「現時点で計画されていない」と報じた。
4月に初めてイランから直接攻撃された際、イスラエルはイラン中部の防空レーダーへの報復攻撃にとどめたとされる。しかし、イランが支援するイスラム教シーア派組織ヒズボラの最高指導者ナスララ師殺害や、レバノン地上侵攻で攻勢を強めるネタニヤフ氏は「(イランや親イラン組織の)『抵抗の枢軸』は後退している。この傾向を続けるため必要なら何でもする」と述べ、大胆な対イラン攻撃に踏み切るとの見方も強まっている。
[時事通信社]
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