2024-10-01 20:52

「翼音お帰りと声掛けたい」=発見の遺体、父譲りの上着―輪島中3女子不明・能登大雨

 石川県・能登半島の大雨で安否不明になった輪島市の中学3年喜三翼音さん(14)とみられる遺体が見つかったことを受け、父鷹也さん(42)らが1日、取材に応じた。鷹也さんは「一日一日、見つかってほしいという思いだった。顔を見たら、お帰りと声を掛けたい」と言葉を詰まらせた。
 鷹也さんによると、翼音さんは市立輪島中の美術部部長を務める「絵が好きで、明るく優しい子」だった。記録的大雨となった9月21日、同市久手川町の自宅では、鷹也さんらが皆外出したため一人で残っていた。
 近くを流れる塚田川は朝は問題なかったが、その後、水位が急激に上昇して氾濫。自宅が危険な状態と聞いた鷹也さんは午前9時43分、外出先から翼音さんとLINEでビデオ通話した。画面越しには、家の周りを覆う茶色の水面が既に見えたという。
 翼音さんは2階の部屋にいたが、ドアは開かず、「窓から飛び降りる」と伝えた。鷹也さんは「(濁流に)のみ込まれるから」と待機を指示。午前10時すぎには電話は通じなくなった。
 最後の通話では、家が流された場合に備え、翼音さんに長袖と長ズボンを着用するよう伝えた。鷹也さんは1日午後に県警輪島署を訪れて遺体の衣服の写真を確認したが、写っている長袖の服は翼音さんから「着ないならちょうだい」と言われ、鷹也さんが譲ったものだった。「あまり言うことを聞かない娘だったが、最後に言うことを聞いてくれた」。 
 輪島市内にあった祖父誠志さん(63)の輪島塗販売店では包装や会計の手伝いをするなど家族思いだった翼音さん。誠志さんは「高校と大学の7年間は手伝いを続けると言ってくれていたのに」と悔やんだ。9月21日に不明となってから11日目。「早く温かい布団でゆっくり休ませてあげたい」と最愛の初孫を思いやった。
[時事通信社]

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