2024-09-30 22:58国際

イスラエル、レバノン地上戦備え侵入か=ヒズボラへ壊滅的打撃狙う

 【エルサレム時事】イスラエルはレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラの指導者ナスララ師の殺害に続き、レバノン南部へ地上侵攻する準備を着々と進めている。米主要各メディアは30日、イスラエル軍がヒズボラ拠点の確認のため既にレバノン領内へ一時侵入したと報じた。ヒズボラに壊滅的打撃を与える構えだが、交戦激化や甚大な損失を被るリスクも大きく、作戦の詳細を慎重に検討しているとみられる。
 米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)は30日、イスラエル軍特殊部隊がレバノン領内へ侵入する小規模で標的を絞った作戦を実施したと報道。ヒズボラが築いた国境沿いのトンネルに入り、本格的な侵攻に備えた情報収集を行ったという。イスラエル公共放送は、結果を憂慮する米国の圧力もあり、侵攻の決定は下されていないと伝えている。
 イスラエル軍は26日にはレバノン国境地帯から数キロの地点で、演習を実施した。声明では「敵領内でのさまざまな戦闘を想定した」と強調し、周到な準備をうかがわせた。
 ネタニヤフ首相は28日、「仕事は完了していない」と言明。地元メディアによると、ガラント国防相は30日、北部で機甲部隊の兵士を前に「われわれは諸君を含む全ての能力を使う」と述べ、近く侵攻に踏み切る可能性を強く示唆した。
 レバノン各地で17、18両日に通信機器を一斉爆発させたのを皮切りに、イスラエルは対ヒズボラ攻勢を強化。23日からは大規模空爆を続け、ヒズボラのミサイル・ロケット弾部門幹部らを次々と殺害し、一気呵成(かせい)に組織を弱体化することを狙っている。
 絶対的指導者だったナスララ師の殺害を受け、イスラエルでは元空軍司令官が地元メディアに「敵が弱った今こそ、降伏に追い込むまで一層攻撃を強める時だ」と発言。地元テレビの世論調査では93%がヒズボラとの停戦に反対し、主戦論が勢いづいている。
 ただ、地上侵攻のハードルは高い。米シンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS)の推計で、ヒズボラのミサイルやロケット弾は12万~20万発、戦闘員は予備部隊を含め5万人超。イスラエルが打倒に手間取るイスラム組織ハマスをはるかに上回り、散発的な交戦が始まった昨年10月以降も大量のミサイルを備蓄しているとされる。
 ヒズボラはレバノン南部の丘陵地に地下トンネル網を構築。兵器や人員を秘密裏に搬送し、ゲリラ戦も可能だ。イスラエルにとっては空爆だけで脅威を排除するのは難しいものの、地上戦で「戦果」を出せるかは見通せない。2006年の侵攻時にはイスラエル側で市民を含め約160人が死亡した。 
[時事通信社]

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