「不明の夫、生きて戻って」=能登大雨、目の前で濁流に―「72時間」経過・石川
「生きて戻ってきてほしい」。記録的な大雨に見舞われた石川県・能登半島では24日、家族や消防が不明者の捜索を懸命に続けた。21日の災害発生から3日となり、生存率が急激に下がるとされる「72時間」が経過。家族らの表情には疲労もにじむ一方、停電や断水が続く地域では、元日の地震以上の苦境を訴える声も出ている。
同県珠洲市真浦海岸沿いで旅館を営む池田幸雄さん(70)は21日、旅館のすぐ横を流れる川にのまれ、行方不明になった。
妻真里子さん(68)は幸雄さんと避難のため自宅を出た直後、最初の濁流に足をすくわれた。「お父さん、どこ?」。少し離れた場所で幸雄さんが手を振るのが見えた瞬間、幸雄さんは2度目の濁流に襲われ、見えなくなった。息子と一緒に土砂や流木をかき分け、浜辺を捜し歩いたが見つかっていない。
社交的で誰からも好かれる性格という幸雄さん。「生きて戻ってほしい。冷たい海からいいかげん出てきて」。真里子さんは声を震わせた。
河川の氾濫で複数の住宅が流された輪島市久手川町。中学3年喜三翼音さん(14)ら3人の安否が依然不明の中、消防や警察は24日、約520人態勢で大規模な捜索を行った。流域に住む女性は「流れ込んで来た土砂は広くて深い。簡単には見つからない恐れもある」と心配そうに見詰めた。
大規模な土砂災害が起きた同市町野町では、住民が過酷な生活を強いられている。町野公民館の谷紀美子館長(69)は「元日の地震では、家が崩れただけなので物を取り出すことができた。今回は泥が押し寄せ、洗い出す水もない。もっと大変だ」と語った。
町野町曽々木の避難所に身を寄せる60代女性は「地震から時間がたち気持ちが少し上向いたと思ったら、今度はマイナスになった。この後どうなるのか」と嘆いた。
[時事通信社]
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