輪島塗工房、復興阻む泥=職人「地震に水害、最悪」―不明中3の捜索続く・石川
記録的な大雨に襲われた石川県輪島市では、伝統工芸「輪島塗」の工房にも被害が出た。能登半島地震からの復興を目指していた職人は「水害も起き、最悪だ」と嘆く。中学3年生が不明となった現場では23日も家族らが一丸となって捜索を続けた。
元日の地震と火災で甚大な被害を受けた輪島塗工房。7月に完成した仮設工房に先月入ったばかりの藤野孝一郎さん(64)は「仕事の準備がようやく9割整ったところだったのに」とため息をつく。作業に必要なのみや金粉も泥まみれで、「わずか1年の間に地震と水害が起きた」とこぼした。
避難先の兵庫県から戻った鮓井伸和さん(41)は泥まみれの室内に「どこから手を付ければいいのか」と立ち尽くした。たんすをこじ開け、泥に漬かった箸を見つけると「ああ、駄目か」と思わず声が漏れた。
地震により、市内の作業場は全壊した。困難を乗り越えての再スタートだったが「またやり直すしかない。生きていたら何とかなる」。自分に言い聞かせ、土砂をスコップでかき出した。
河川氾濫に伴う濁流で複数の住宅が流された同市久手川町。中学3年喜三翼音さん(14)の安否が依然不明の中、範囲を広げて警察や消防の捜索が続いた。父鷹也さん(42)ら家族も加わり、現場を歩き回った。
つえを手にした祖父誠志さん(63)は「奇跡が起きてくれないか。少しでも力になりたい」と願った。翼音さんがいた家は形を保ったまま約300メートル下流に流され大破したとの目撃情報があり、現場近くや下流からは、翼音さんの文房具やCDなどが見つかったという。
市立輪島中の同級生も次々と現場を訪れた。流される直前までメッセージのやりとりをしていた男子生徒(14)は「早く見つかってほしい」と無事を祈った。別の男子生徒(15)は、時折涙を拭いながら手掛かりを探していた。
[時事通信社]
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