経済悪化で社会不安=刃物による襲撃相次ぐ―中国
【北京時事】中国広東省深セン市で日本人学校の男児が刺され死亡した事件で、地元警察は「44歳の男をその場で取り押さえた」と発表したが、動機などは一切明らかにしていない。日本人を狙った犯行なのかも不明だ。中国では刃物を使った襲撃事件が相次いでおり、背景には経済情勢の悪化による社会不安があるとみられる。
深センと同様に日本人が多く住む江蘇省蘇州市では6月、日本人学校のスクールバスを待っていた日本人母子を男が刃物で襲撃する事件が起きた。今月には吉林省長春市にある商業施設の敷地内で、男が刃物を持って暴れ、取り押さえようとした警官が死亡。男はその場で射殺された。
経済専門家は「長引く不動産不況が景気回復を阻んでおり、社会不安が広がりかねない状況だ」と懸念する。中国では、不動産市場が経済全体に大きな影響を及ぼす。幅広い業種の企業が不況で痛手を被り、雇用環境が悪化。失業者が犯罪に手を染めるケースが増えている可能性がある。
さらに、新型コロナウイルス感染を徹底的に封じ込める厳格な「ゼロコロナ」政策が、経済不振を加速させた。2022年末に解除へ急転換したが、それ以降も経済再建は順調に進んでいない。
「習近平政権は経済より国家安全を重視している」(外交筋)と言われる。国内各地では農村部を含む至る所に監視カメラが設置され、犯罪発生後早期に犯人を特定し拘束する体制が整ってはいる。しかし、凶器を使った突然の犯行を防ぐのは容易でない。経済低迷が社会混乱を引き起こさないよう、習政権は当面、困難なかじ取りを余儀なくされそうだ。
[時事通信社]
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