北極の珍味「海氷」=海の生物生産促す役割も
【みらい船上・時事】北極海で観測を行う海洋地球研究船「みらい」で17日、海氷のサンプル採取が行われた。海氷はここでしか手に入らない珍味中の珍味。せっかくなので、成分分析に回さないかけらを味わってみた。
恐る恐る口に含んでみると、真水の氷と変わらない。むしろ家庭で製氷した氷よりおいしい。「これが北極の海氷か」と感慨に浸りながらなめていると、最後に濃厚な塩辛さに襲われた。
さらに、口にざらざらとした物が残る。気持ち悪いので吐き出すと、オレンジ色の小さな粒状の物体が幾つか出てきた。その後、1時間以上経過しても口の中には塩っぽさが残った。
採取した氷の分析を行う北海道大水産科学院博士課程の戸沢愛美さんは、海氷が凍るプロセスは「スポーツドリンクを凍らせた時と同じ」と説明する。真水の部分が先に凍り、塩分や二酸化炭素、栄養素が濃縮された「ブライン」と呼ばれる高塩分水が放出される。「たまにブラインが抜けきらず、海氷中のポケットに残ることもある」と話す。
海水の塩分濃度は、採取した場所や深さで異なるが3%前後。新しい海氷は0.5%程度で、古い氷になるとほぼゼロになる。放出されたブラインは重いため沈み、海水の対流を生み出す。こうして海底にたまった栄養分が循環し、春に太陽光が当たると生物生産が活発になるという。
記者が経験した塩っぽさの原因がブラインだったのか、氷上で固まった雪に染み込んだ海水だったのかは分からない。ブラインが放出された後の氷のポケットには、アイスアルジーと呼ばれる藻類が生息する場合もあるとされる。
口に残った正体不明の小さい粒は、昼食の食べかすかもしれないと思って捨ててしまったが、アイスアルジーだった可能性も。そう考えると、若干腹痛を覚え始めた。
[時事通信社]
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