脱「異端児」、もろ刃の剣=河野氏、支持拡大見えず―自民党
三度目の正直で「首相の座」を射止めるか―。河野太郎デジタル相(61)が26日、自民党総裁選に名乗りを上げた。持論だった「脱原発」の主張を完全に封印。所属する麻生派(54人)に軸足を置くが、党内での支持拡大は見通せない。従来の「異端児」イメージからの転換はもろ刃の剣となりかねない。
「電力供給を最大限にするため、あらゆる技術に張っておかなければいけない」。26日の記者会見で原発新増設の是非について問われた河野氏はこう明言し、原発リプレース(建て替え)も「選択肢」だと認めた。
2009年、野党に転落した直後の党総裁選に初挑戦。外相などを歴任し、満を持して再び臨んだ21年総裁選は党員票でトップに立ったものの、国会議員票の比重が大きい決選投票で岸田文雄首相に敗れた。
若手時代は森喜朗元首相ら党長老にかみつき、脱原発や女系天皇容認に言及する政治姿勢は保守系を中心に「中身はリベラル」(自民ベテラン)と忌避された。前回の敗北後に「乞うご期待」と再起を誓い、麻生派内で中堅・若手との勉強会と並行し、ベテランとの会食を意識的に重ねて支持固めを進めた。
同派重鎮の鈴木俊一財務相は、かつて距離があった河野氏の会合に招かれた際、支持者らを前に「河野氏は最近、一般常識が付いてきた」と評し、笑いを誘った。会長の麻生太郎副総裁も総裁選対応で「うちは河野がいる」と周囲に明言。派内で河野氏をもり立てようとするムードはかつてないほど高まった。
だが、派閥裏金問題を受け「脱派閥」の流れが強まる中、逆行するかのような河野氏の動きは「ポスト岸田」内では少数派だ。会見では「裏金」の返納を条件に国政選で公認する考えを説明。「河野節」は鳴りを潜め、安倍派内からは「マイルドな内容だった」と評価する声が出た。世論調査では石破茂元幹事長(67)と小泉進次郎元環境相(43)に水をあけられ、どう挽回するかが課題だ。
「政策通」の自覚が不用意な発言につながったこともある。前回総裁選では全額税方式の「最低保障年金」創設を提唱したものの具体的な財源論は示せず、集中砲火を浴びた。この日の会見では「傷だらけになりながら、改革をとことん進める意志があるかが問われる」と「改革派」をアピールしたが、陣営幹部は「長丁場の総裁選。何が出てくるかは分からない」と懸念を漏らした。
[時事通信社]
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