中国禁輸、解決見通せず=島しょ国理解に手応え―政府・処理水放出1年
東京電力福島第1原発の処理水放出を受け、中国が踏み切った日本産水産物の禁輸措置は、依然として解決のめどが立っていない。日本側は科学的データに基づく安全性を説明し、中国側に規制撤廃を求めていく方針。一方、太平洋島しょ国の理解については手応えを感じている。
岸田文雄首相は24日、福島県いわき市を訪れ、漁業関係者と意見交換。記者団に「輸入停止は科学的根拠に基づかず極めて遺憾だ。あらゆる機会を捉えて即時撤廃を強く求めていく」と語った。
岸田首相と習近平国家主席は昨年11月の首脳会談で、日中の専門家による協議を行うことで合意。1月に始まったが、具体的な進展は見えていない。7月の上川陽子外相と王毅共産党政治局員兼外相の会談でも協議加速の一致にとどまった。
中国側は処理水を「核汚染水」と批判し続けている。これに対し、日本側は国際原子力機関(IAEA)が関与した監視体制による安全性への理解を粘り強く訴える構え。政権幹部は「中国に誠意をもって対応するが、IAEAの客観性を受け入れてもらうしかない」と指摘した。
11月には日中首脳が例年出席する国際会議が南米で開かれる。政府は、岸田首相の後継となる新首相と習主席の首脳会談開催を模索。首脳レベルで禁輸措置の撤廃を改めて働き掛ける考えだ。
処理水を巡っては、太平洋島しょ国も当初、懸念を示していた。放出前の昨年2月、岸田首相は地域組織「太平洋諸島フォーラム(PIF)」代表団と会談し、「健康と海洋環境に悪影響を与える放出は行わない」と約束。直後に林芳正外相(当時)を島しょ国に派遣して信頼関係の構築に努めた。
放出後も海洋モニタリング結果などの説明を継続。その結果、7月に東京で開いた日本と島しょ国・地域の首脳会議「太平洋・島サミット」では、各国から日本の取り組みに対する理解が示された。外務省幹部は「中国以外では日本の説明が信用されている」と強調した。
[時事通信社]
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