英イングランド東部で進む海岸浸食、家を失う住民たち
【ヘムスビーAFP=時事】潜水艦の電気技師だったケビン・ジョーダンさん(71)は、英イングランド東部ノーフォーク州の海岸沿いの自宅で、波の音を聞きながら老後の生活を送ろうと考えていた。≪写真は、高潮で海に引き込まれた住宅。英イングランド東部ヘムスビーで≫
しかし、昨年11月にその夢は崩れ去った。海岸浸食を理由に、自宅は取り壊された。
ジョーダンさんは現在、環境団体「地球の友」が起こした訴訟に参加している。この訴訟では、政府が気候変動の予見可能な影響から人々を保護するための十分な対策を講じていないと訴えている。
ジョーダンさんの家はグレートヤーマスの北方約13キロにある海辺のリゾート、ヘムスビービーチを見下ろす、砂と粘土でできたもろい崖の上に立っていた。周りには数十軒の家があった。
数か月前までは、ジョーダンさんの家の玄関まで道が通っていた。しかし、今ではアスファルトの道は跡形もなく消え、立ち入り禁止の柵が設置されている。
「昨年11月に嵐があった。夕方から一晩かけて嵐があれほど激しくなったのには本当に驚いた」とジョーダンさんは語った。
嵐の翌日、住民たちは道路の一部が流され、海岸線が近づき、ジョーダンさんの家が危うい状態にあるのを目の当たりにした。
ジョーダンさんは15年前にパートナーに先立たれると、北海を見下ろすこの家を購入。浸食の危険性をよく認識していたが、当時、専門家は少なくとも100年間は心配する必要はないと語っていた。
嵐の後、ジョーダンさんと4人の近隣住民は、1週間以内に家を取り壊すため立ち退くように、との通知を受け取った。
補償は一切なく、体調が優れないジョーダンさんにとっての唯一の解決策は、数キロ離れた公営住宅に移ることだった。その窓からは、コンクリートの建物しか見えない。
2月にノーフォーク議会に提出された報告書によると、150キロを超えるノーフォークの海岸線は、欧州北西部で浸食の影響を最も受けている場所の一つだという。
報告書は、今世紀末までに海面が1.15メートル上昇すると予測しており、何も対策を講じなければ2105年までに1000軒近くの住宅や店舗が消滅するとしている。【翻訳編集AFPBBNews】
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