快挙の裏、国境越えた絆=本音ぶつけた北口とコーチ―陸上女子やり投げ〔五輪〕
陸上女子やり投げで金メダルを獲得し、泣きじゃくる北口榛花選手(26)=JAL=を観客席から見守るチェコ人コーチがいた。2019年から指導するダビド・セケラック氏(49)。日本女子のトラック・フィールド種目で初の快挙の裏には、国境を越えた絆があった。
5月中旬の夜、東京都内。本人を含めた「チーム北口」7人が集まった会議室は不穏な空気に包まれた。
今季序盤は不完全燃焼続きだった北口選手。打開しようと、強みである体の柔軟性を発揮できるよう練習内容を組み直したかった。「丸1日の休みが欲しい」「この筋力トレーニングは必要ない」などの希望を16項目にまとめ、セケラック氏に渡した。
解剖学的見地から北口選手をサポートする元筑波大准教授の足立和隆さん(67)が補足説明をするうちに、セケラック氏の表情は険しくなった。北口選手は次第に感情が高ぶり、涙をぼろぼろとこぼしながらチェコ語で自分の胸の内を吐露した。
最終的には2人でハグし、パリ五輪に向けて足並みをそろえることで思いを一つに。練習内容は、トレーナー陣とセケラック氏が密に連絡を取り合って決めることになった。
18年にフィンランドで行われた講習会で出会った2人。東京五輪を前に思い切って環境を変えようとした北口選手がメッセージを送り、翌年からチェコを拠点とした生活が始まった。投てきの本場のトレーニングで助走が改善し、日本記録を更新した。
新型コロナウイルス下の東京五輪を挟み、22年に世界選手権で銅メダル、さらに23年は金メダルとステップアップした。世界の頂点に立っても北口選手は「もっと努力をしたい」とセケラック氏に伝えた。
朗らかな表情の下に、「アスリートは常に上を目指し、できる努力は全部しなければいけない」との真摯(しんし)な姿勢を貫く北口選手。念願の五輪金メダルに手が届いた後、「満足できるものなのかなと思っていたけど、65メートルではまだ満足できない」と感じる自分がいた。さらなる高みに向け、本音をぶつけてきたコーチとの歩みがまだ続きそうだ。 (時事)
[時事通信社]
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