企業の利払い負担増加=人手不足・物価高に追い打ちも―日銀追加利上げ
日銀が追加利上げに踏み切ったことで、金融機関による顧客企業向け融資金利も上昇が見込まれる。コロナ禍からの経済活動正常化で、企業収益は大企業を中心に改善してきたが、人手不足や物価高に苦しむ中小企業も少なくない。超低水準だった利払い負担の増加が、苦境に追い打ちをかける懸念もあり、企業の収益力向上が急がれる。
企業向け融資の金利は、市場金利や短期プライムレート(短プラ)を基に各社の信用力に応じて決められる場合が多い。帝国データバンクによると、企業の2023年度の平均借入金利は1.02%(約8万社、5月速報値)と3年ぶりに1%を超え、金利は既に上昇局面に入っている。
今回の追加利上げを受け、大半の金融機関は長年据え置いてきた短プラも引き上げる見通し。企業との金利改定交渉が今後、本格化することになる。短プラ連動融資の主な対象である中小企業でも、借り換えや新規借入時の利払い費が増えると見込まれる。
日銀は「多くの企業は高い金利でも利払い負担に耐え得る収益力を確保している」(4月の金融システムリポート)と分析、大きな混乱は回避できるとみる。ただ、足元では人手不足などを理由に倒産件数が増加。中小企業ほど物価高の価格転嫁も進んでおらず、財務のばらつきは大きい。
帝国データは、借入金利が0.5%上昇すると国内の企業約9万社の3.8%が赤字に転落する恐れがあると試算。「金利のある世界」の到来で「中小企業の経営体力が試される」と指摘している。金融機関にも、生産性向上や事業再構築など資金繰りにとどまらない支援が求められる。
[時事通信社]
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