ウズラ農家苦境、支援を=給食事故で使用中止広がる―全国6割超生産・愛知
中華丼や釜飯、串揚げの具などに欠かせないウズラの卵。福岡県の小学校で2月、水煮を喉に詰まらせたとみられる死亡事故が起き、学校給食での使用を見合わせる動きが広がった。全国の6割以上を生産する愛知県では、加工メーカーの在庫が山積みになり、親鳥の飼育を減らす農家も出てきた。地元自治体は支援を呼び掛けている。
「新型コロナの一斉休校も苦しかったが、今回はトンネルの出口が見えない」。大手加工メーカー「天狗缶詰」(名古屋市)の担当者は深刻そうに話す。同社によると、ウズラの卵の水煮の給食向け出荷数は事故後、大幅に減少し、6月は昨年の約6割にとどまった。愛知県豊川市の工場倉庫には、出荷が滞った商品の在庫が積み上がり、同月末時点で昨年の約1.8倍に達した。
国内唯一のウズラ専門農協「豊橋養鶉農業協同組合」(同県豊橋市)では、卵の水煮約300万個を保管できる倉庫が満杯になり、組合員に5月、生産調整を要請。親鳥を間引いて卵の量を減らしてもらった。職員は「賞味期限が近い商品を4割引きで売ってスペースを空けたが、追い付かなかった」と悔やむ。
約80万羽を飼育していた「高林ファーム」(同市)も、加工メーカーの求めで約4万羽減らした。高林勝弘専務(45)は「飼料価格の高騰や輸入品の増加で、業界は以前から苦しい状況が続いている。廃業する農家も出てくるのではないか」と懸念する。
愛知県によると、県内では昨年、23農場でウズラ約265万羽を飼育。卵の生産量は全国の6割以上を占め、豊橋市など東三河地域で大半が作られている。
地元の特産品を「食べて応援」しようと、豊橋市では職員有志と市議が6月、養鶉農協から賞味期限の迫った水煮約5000パックを購入。県も今月始まった大相撲名古屋場所の優勝力士に、知事賞の副賞として水煮1万個を贈ると決めた。
他の自治体や企業にも支援の動きが広がっているといい、同市の担当者は「ウズラの卵は栄養価も高く、よくかんで食べれば問題ない。全国の学校給食で再び使われるようになるまで、できる限りのことをしたい」と話した。
[時事通信社]
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