欧州の中道・左派は安堵=極右伸長に歯止め―仏総選挙
【ベルリン時事】フランス総選挙は、マクロン政権を支える中道与党が敗北したものの「反極右」の政治勢力が共闘し、破竹の勢いだった国民連合(RN)の過半数獲得を阻止した。極右が台頭する自国の状況と重ねて選挙戦を見守っていた中道・左派系の欧州諸国指導者らは、「十分に満足できる」(ポーランドのトゥスク首相)と胸をなで下ろしている。ただ、新内閣の輪郭は見通せず、気をもむ状況が続いている。
先月の欧州議会選では、移民急増やロシアの侵攻が続くウクライナへの支援疲れなどを背景に、フランスを含む各国で極右やポピュリスト政党が伸長した。今月2日にはオランダで極右主導のスホーフ政権が発足。仏総選挙の第1回投票でRNの最多得票が伝えられると、欧州諸国に緊張が走った。
フランスと共に欧州連合(EU)の屋台骨を担うドイツで左派連立政権を率いるショルツ首相は8日、「間違いなく政府全体が安堵(あんど)している」と強調した。決選投票前、隣国に極右内閣が誕生しかねない状況に「気がめいる」とこぼしていた。
独政界では極右政党「ドイツのための選択肢」への警戒感が強まっており、仏総選挙の結果はメディアで「(極右拡大を阻む)防火壁がルペン(RN前党首)を止めた」(南ドイツ新聞)「RNのパリの権力中枢への行進がひとまず止まった」(フランクフルター・アルゲマイネ)などと好意的に伝えられた。
スペインで中道左派政党を率いるサンチェス首相は、X(旧ツイッター)で「(フランスは)極右を拒否し、人々の問題と真剣に取り組む左派を選んだ」と歓迎した。
一方、極右出身のイタリアのメローニ首相は、第1回投票で「RNの明らかな勝利」に祝意を表明していただけに、心中は穏やかでなさそうだ。隣国に極右内閣が生まれれば欧州政治で共闘する余地があったが、思惑が外れた形。メローニ政権自体は現実路線を取り、仏中道与党とも円滑な関係を築いてきたが、新内閣が左派主導になった場合は摩擦が生じる可能性がある。
仏政治は当面、不安定な状況が続くとみられる。EU当局者は、ロイター通信に「(選挙結果が)欧州の日々の問題にとって何を意味するかは、まだ分からない」と指摘した。
[時事通信社]
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