苦い記憶、塗り替える=井上、地元前橋で好投―プロ野球・巨人

一つのストライク、一つのアウトを取るたびに歓声が上がった。前橋市出身の巨人の井上が、地元のマウンドに立って8回無失点の好投。「温かい声援をいただいて、いい投球をすることができた」。満面の笑みで感謝を口にした。
一回2死一、二塁のピンチを切り抜け、ここからリズムに乗った。直球とフォークは切れがあり、きっちり低めに制球。六、七、八回は走者を背負うといずれも併殺に仕留め、中日の反撃の芽を摘んだ。
子どもの頃から何度もプレーしたという、なじみ深い球場。思い出はいくつもあるが、前橋商高時代の3年夏に群馬県大会決勝で投げて敗れ、甲子園出場を逃した悔しさだけは、何年たっても消えることはなかった。「毎年、夏になると思い出す」
だが、その苦い記憶は「いい思い出」に塗り替えられた。プロという最高峰の舞台で、投球内容も文句なしの3勝目を挙げた23歳。「疲れを感じないくらい、期待に応えようという気持ちが強くなって、こういう結果になった」。少年時代に涙をのんだ左腕は、心身ともにたくましく成長。堂々と故郷に錦を飾った。
[時事通信社]
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