「子つくる幸せ、国が奪った」=聴覚障害の原告女性―強制不妊訴訟、3日に最高裁判決
旧優生保護法に基づき不妊手術を強制されたとして、全国の男女が国に損害賠償を求めた5件の訴訟の上告審判決が3日、最高裁大法廷(裁判長・戸倉三郎長官)で言い渡される。聴覚障害を持つ大阪府の原告女性(78)は判決を前に、「子どもをつくる幸せを国が奪ったのは障害者差別だ」と手話で訴えた。
同じ聴覚障害を持つ夫(83)と1970年に結婚。ともに20代だった2人は「耳は聞こえないけど子どもは欲しいね」と普段から話していた。妊娠していることが分かり、子どもが大きくなったときのことを想像して楽しみにしていた。
74年に出産。病院から無事に生まれたとの連絡を受けて夫が駆け付けると、白い布に包まれ横たわった赤ちゃんが、両手を上げて動いているのが見えた。しかし翌日、赤ちゃんは死亡。女性は出産直後に高熱が出るなど体調不良となり、赤ちゃんを一目見ることもできなかった。医師や看護師に原因を尋ねたが、教えてもらえなかった。
出産後、母親から「赤ちゃんはもうできない」「子どもをつくったらだめ」と言われた。その後、子どもがなかなかできず、「帝王切開で出産した際に不妊手術をされたのではないか」と疑って何度も母親に聞いたが、答えてもらえなかった。
40年以上がたった2018年、友人の紹介で大阪聴力障害者協会が行っていた強制不妊手術の実態調査を受けた。調査員から兵庫県での訴訟の話を聞く中で旧優生保護法のことを初めて知り、自身も19年に大阪地裁に提訴。地裁判決で、帝王切開の際に不妊手術をされたとみて矛盾はないと判断された。
女性は「耳が聞こえなくても出産して育てている人を見るとうらやましい。子どもがいたら協力して幸せな家庭を築きたかった」と悔しさをあらわにする。国に対しては「障害があるという理由で法律が子を持つかどうかを決めるのは差別。過ちを認めてほしい」と訴えた。
[時事通信社]
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