「子どもの日常大切に」=恒例のマーチング披露―石川・輪島の幼稚園
石川県輪島市の住職藤山壱史さん(57)は6月中旬、園長を務める幼稚園児19人が披露したマーチングに目を細めた。能登半島地震で寺は倒壊し、同じ敷地にある和光幼稚園の建物も被災。園児が例年、マーチングを披露していた地域の祭りは中止となったが、「地震前の日常を過ごしてほしい」との思いから、代わりとなる「お披露目会」を開催した。
元日の地震発生時、本堂にいた藤山さんは立っていられないほどの揺れに襲われ、築100年以上だった寺は屋根が滑り落ちるように倒れた。自身は柱や梁(はり)に守られ無事だったが、隣接する自宅も倒壊。園舎は窓ガラスが割れ、外壁にひびが入った。
幸い園児も全員無事だった一方、園は周辺住民の避難所となったため3月まで休止に。さらに、園児が例年、マーチングを披露してきた6月の「輪島市民まつり」も中止となった。
それでも、地震前と変わらない生活を送ってもらおうと、独自にお披露目会開催を決定。年長・年中の園児19人は1カ月以上かけ、英ロックバンド「クイーン」のメドレーなど2曲を練習してきた。
6月19日の発表当日。倒壊した寺のがれきが残る中、幼稚園の駐車場ではおそろいの衣装を着た19人が音楽に合わせて旗を振り、太鼓をたたいた。保護者ら約70人はビデオカメラを手に見守り、演奏が終わると大きな拍手を送った。
「幼い時に友達と一緒に何かに取り組むことは大事な経験。良いと思えることは何でもさせてあげたい」という藤山さん。仮設住宅から通っている子どももいるが、「いつか地震を一つの経験として振り返り、何にでも感謝できる大人になってほしい」と語る。
[時事通信社]
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