マラソン、カギは急勾配の克服=箱根駅伝ほうふつ―「速さよりタフさを」・近づく祭典
パリ五輪のマラソンコースはフランス革命時の1789年、食料難に苦しむ数千人の女性らが抗議で歩いた「ベルサイユ行進」に着想を得て設定された。男子は8月10日、女子は大会最終日の同11日の午前8時に号砲。女子マラソンが陸上の最終種目となるのは初めてで、出場選手数が史上初めて男女同数となるパリ五輪を象徴するレースとなる。
◇名所ひしめく序盤
序盤は観光ツアーのように都心を駆け抜ける。パリ市庁舎前をスタートして中心部へ向かい、オペラ座、ルーブル美術館を通ってセーヌ川沿いへ。コンコルド広場、開会式の舞台となるトロカデロ広場など次々と名所が現れ、歴史と芸術の街の息吹を感じられる。
平たんだった道は15キロ付近で一変する。傾斜の緩急がある上り坂が3キロほど続き、じわじわと体力が消耗する。19キロすぎが第一の難所。急勾配の上り坂が数百メートル続き、心も削られる。20.3キロで最高点183メートルに到達した後は急な下り坂となり、脚に負荷がかかる。
◇激しいアップダウン
広い通りを直進していくと、優雅できらびやかなベルサイユ宮殿が見えてくる。コースの西端となる23キロ付近の同宮殿前を折り返し、異なるルートでパリ市内へと戻っていく。
28.5キロ付近から最大の難所に突入する。最大勾配13.5%の過酷な坂を約800メートル駆け上がる。心身ともに最も苦しくなるポイントだろう。その後の下りも厳しい関門。31キロすぎから急勾配の坂を約1キロ一気に駆け下りる。まるでジェットコースターのような感覚だ。
正月の風物詩、箱根駅伝の山登りの5区と山下りの6区をほうふつとさせる激しいアップダウン。ここを効率よく走れるかどうかが勝負のカギを握る。女子代表の一山麻緒(資生堂)を指導する永山忠幸コーチは「速さというよりも、精神的なタフさを持っている人でないと大変だと思う。上り、下りのスピードの切り替えができるか」とレースを思い描いた。
◇終盤にエッフェル塔
32.5キロ以降はほぼ平たんだ。セーヌ川沿いを北上し、38キロすぎでパリのランドマークであるエッフェル塔を通過し、クライマックスへ。ナポレオンの墓があるアンバリッド(廃兵院)前がゴールとなる。コース全体の最大高低差は約150メートルに及ぶ。
起伏に富んだ中盤でいかに疲労をためず、終盤に勝負できる力を残せるか。急勾配を克服するたくましさが求められる。現地で試走した女子代表の鈴木優花(第一生命グループ)は「スピードレースにはならないと思う。そこもチャンス」。最後まで手に汗握るスリリングな展開が期待される。 (パリ時事)
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