国際政治の「司令塔」=50回目サミット、変わる役割―主要国、民主主義の価値共有
イタリア南部プーリア州で13日に開幕する先進7カ国首脳会議(G7サミット)は、今回で50回の節目を迎える。経済討議の場として始まったサミットは、国際社会を揺るがす政治問題への対応を議論し、価値観を共有する主要国が結束を確認する「国際政治の司令塔」へと、その役割を変えてきた。
◇経済政策調整から安保討議へ
サミットは1975年にフランスのジスカールデスタン大統領の提案で、日米英仏伊と西ドイツ(当時)の6カ国によりパリ郊外ランブイエで第1回が開かれた。73年の第1次石油危機などを背景に、金融・貿易政策を調整した。
76年にはカナダが加わり「G7」に。ソ連のアフガニスタン侵攻を受け、80年の伊ベネチア・サミットで政治問題が公式議題となり、以降は安全保障も活発に議論されるようになっていく。
冷戦終結を経て、98年からロシアを含め「G8」と呼ばれるようになった。しかし、2008年に中国なども参加する20カ国・地域(G20)首脳会議が始まると、G8の地位は低下。14年にはウクライナ南部クリミア併合を強行したロシアが排除され、G8はG7に逆戻りした。22年のロシアのウクライナ侵攻以降は、民主主義の価値観を共有する主要国の会議として、G7の重要性が再評価されるようになった。
国際社会の安全維持に主要な責任を担うのは国連安全保障理事会だが、常任理事国の拒否権行使で機能不全に陥りがちだ。名古屋外国語大の高瀬淳一教授(国際関係論)はG7について、安保理に比べ「柔軟に社会の変動に対応」できると指摘。「国際政治の方向性を示す司令塔的役割を果たしている」と解説する。
◇「地域代表」日本
アジア唯一の正式メンバーである日本は、覇権主義的動きを強める中国や核・ミサイル開発を進める北朝鮮など、地域が抱える課題に協力して対処するよう、サミットの場で欧米の参加国に働き掛けてきた。
昨年の広島サミットでは唯一の被爆国として核軍縮に焦点を当て、「広島ビジョン」を発表。首脳声明では「台湾海峡の平和と安定の重要性」を再確認した。ウクライナのゼレンスキー大統領を迎え、連帯し支援していく姿勢も打ち出した。
プーリアでのサミットには、アフリカ諸国やトルコ、インドなどが招待国として参加する一方、韓国やオーストラリアは招かれなかった。移民問題とアフリカ支援を重視する議長国イタリアの意向だ。アジアの招待国が例年より少ない中、日本が地域代表の役割を果たせるかも注目点となる。
[時事通信社]
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