侵攻後の在日ロシア人描く=日本社会の安易なレッテルに一石―短編映画制作の大根田監督
ウクライナ侵攻で揺れる在日ロシア人と日本人少女の心の交流を描く短編映画「サーシャの坂道」が9日、東京都内で上映された。侵攻を境に日本社会のロシア人への見方に変化が起きたが、大根田良樹監督は「僕のロシア人の友人は何も変わっていないのにという葛藤があって、この映画が生まれた」と制作の経緯を語った。
都内で開催中の国際短編映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル&アジア」の会場で時事通信の取材に応じた。映画の舞台は東京の郊外。ウクライナのニュースが流れる中、ロシア人が先生の英語塾から生徒がやめていく。こうした状況を、不安を抱きながら見詰める女子生徒の姿を約20分の作品にまとめた。
制作のきっかけとなったのが監督の友人で先生役のセルゲイ・ウラソフさん。ロシア生まれでイスラエルに移住し、今は日本に留学中。ロシアとイスラエルの両方のニュースに日々胸をざわつかせる立場だ。
人はそれぞれ違うのに「ニュースからのイメージだけで人を判断してしまいがちだ」と監督は述べ、情報過多の一方で安易な結論に陥る社会への問題意識を提起する。作品では「悪意があるわけではないし、差別ではないけど」というささいな日常の言動を取り上げ、孤立する先生と生徒の心情を掘り下げた。
「サーシャの坂道」は赤十字国際委員会(ICRC)が協力した映画祭のイベント「戦争と生きる力プログラム」の中で、戦争が絡む他の短編映画と共に上映された。監督は戦争の傍らで「スポットライトを浴びられない人たちを描いていきたい」と抱負を語っている。
[時事通信社]
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