能動的サイバー防御、秋にも法案提出=憲法整合性、監視対象が論点―有識者会議で検討開始
政府は7日、サイバー攻撃を未然に防ぐ「能動的サイバー防御」の導入に向けた有識者会議の初会合を首相官邸で開いた。岸田文雄首相は関連法案の早期取りまとめを指示。早ければ今秋に見込まれる臨時国会への提出を目指す。憲法が保障する「通信の秘密」保護との整合性、政府による通信監視対象の範囲などが論点となる。
首相は「サイバー対応能力の向上は急を要する課題だ。わが国の安全保障をサイバー空間からも確実なものとしていく」と強調した。
能動的サイバー防御は、被害の未然防止を目的に平時から通信を監視。攻撃の予兆を検知すれば相手方のサーバーに侵入して無害化する措置を指す。
防御対象は政府機関や電力、通信、空港などの重要インフラを想定。中国などによる脅威の高まりを受け、政府は2022年改定の国家安全保障戦略に導入方針を盛り込んだ。
会議はサイバー防御に詳しい専門家ら17人で構成。座長に佐々江賢一郎・元駐米大使が就いた。会議を担当する河野太郎デジタル相は議題として▽官民の情報共有▽攻撃に悪用されるサーバーの検知の在り方▽政府への権限付与―を挙げた。テーマごとに作業部会を設け、議論を進める。会議の成果を数カ月以内に取りまとめる方針だ。
導入には、許諾なくデータへのアクセスを禁じる不正アクセス禁止法や電気通信事業法などの改正が必要となる。
会議では、国民理解の重要性や丁寧な検討を求める意見が出た。憲法が専門の宍戸常寿・東大大学院教授は会議後、記者団に「通信の秘密」について「憲法上の重要な権利であると同時に、公共の福祉のために必要かつ合理的な制限が許容される」と語った。「過剰な制限は非常に大きな問題をはらむ」とも述べ、第三者機関による実効的な監視の仕組みを提案したと明らかにした。
内閣官房の担当者は報道各社に「他人のメールを見たいわけではない。権限の乱用とならないようシステムをつくっていきたい」と説明。第三者機関設置も視野に検討を進める考えを示した。
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