右派の伸長焦点=ウクライナ支援に影響も―欧州議会選まで1カ月
【ブリュッセル時事】欧州連合(EU)各国で市民代表を決める5年に1度の欧州議会選挙(定数720)は、6月6~9日の投票まで1カ月に迫った。物価高や移民流入、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化に伴う「支援疲れ」などを背景に、ポピュリズム(大衆迎合主義)的な政策を掲げて支持を集める右派の2会派が、どこまで議席を伸ばすかが焦点となりそうだ。
議会選の結果は、EUの行政府に当たる欧州委員会のトップ人事や、今後5年の政策運営に直結する。フォンデアライエン欧州委員長の所属政党が参加する中道右派「欧州人民党(EPP)」が最大会派の座を維持する見込みだが、右派が大幅に勢力を伸ばせば、環境政策やウクライナ支援が後退する可能性もある。
「(EU主要機関が集まる)ブリュッセルの官僚1万人を解雇する。まずはあなただ」。4月末に行われた討論会の冒頭、右派「アイデンティティーと民主主義(ID)」のアンダース・ビステセン議員はEU批判を展開し、隣のフォンデアライエン氏に辛辣(しんらつ)な言葉を浴びせた。
IDは、反EUや反移民を掲げ「一貫して議会多数派を支持しない」(ドイツのシンクタンク)会派。フランスの国民連合や「ドイツのための選択肢(AfD)」といった極右政党が集う。米政治専門メディア、ポリティコ欧州版は4月末時点で、現有59議席を83議席に伸ばすと予想している。
IDと比べ穏健とされる右派「欧州保守改革(ECR)」も議席を増やす見通しだ。ECRトップで極右政党「イタリアの同胞」を率いるメローニ首相は先週、得票の上積みを目指し議会選に出馬する意向を示した。
だが、3月以降は右派に逆風も吹き始めた。IDの一角を占める政党の候補者が親ロシア派組織から資金を得ていた疑惑が浮上。別の同会派議員のスタッフは、中国のスパイとして活動した容疑で独当局に拘束された。フォンデアライエン氏は討論会で、自身の政策運営などをやり玉に挙げたビステセン氏に「批判する前に、事態を収拾すべきでは」と痛烈にやり返した。
[時事通信社]
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