ハマス奇襲で両親死亡、平和訴えるイスラエル人男性
【シェファアムル(イスラエル)AFP=時事】イスラム組織ハマスによる昨年10月7日の奇襲で両親を亡くしたイスラエル人実業家マオズ・イノンさん(49)は、報復ではなく平和を訴えている。≪写真は、イスラム組織ハマスの攻撃で焼け焦げた車。イスラエル南部ネティブハアサラで≫
イスラエル北部シェファアムルで行われた小規模な平和デモで、イノンさんは「復讐(ふくしゅう)は望んでいない」とAFPに話した。デモには、ユダヤ人だけではなくパレスチナ人も参加していた。イスラエルとハマスの戦闘が始まってからは、こうしたデモが行われること自体が異例だ。
ガザ地区に程近い集落ネティブハアサラに住んでいた母ビルハさんと父ヤコビさんは、ハマスからロケット弾による攻撃を受け、自宅で死亡した。イノンさんは、両親を亡くした当初は、平和と許しを呼び掛けるのは簡単ではなかったと認めた。「だが、こうした呼び掛けをするのは私の両親のレガシー(遺産)だ。未来は、より良いものになる」と話した。
「戦争はイスラエル国民に安心も安全保障も、もたらさない。もちろんパレスチナ人にもだ」と訴え、「血と恐怖の応酬は100年以上続いている」と続けた。
イスラエルの公式発表をまとめたAFPの統計によると、昨年のハマスによる奇襲でイスラエルでは約1160人が死亡した。大半は民間人だった。
一方、ガザの保健当局によると、イスラエルが続ける報復攻撃では3万以上が死亡した。大半は女性と子どもだとされる。
両親を亡くしてからのイノンさんは、イスラエルはもちろん、欧州にも足を運び、パレスチナ人との対話を行ってきた。中には、「父親や兄弟、一族全員」を亡くしたガザ出身者もいる。
■「許し」が不可欠
「幾つかの学びがあり、私の人生は変わった」とイノンさんは言う。「そのうちの一つは、希望は行動だということ。希望を生み出すためには、行動しなければならない。待っていても、与えられるものではない。われわれは希望をつくらなければならない。このデモ行進はそうした行動の一つだ」と語った。
イノンさんはホステルを複数経営しており、その一つは、パレスチナ人が多く住むイスラエル北部の旧市街ナザレにある。「自らの経験から、イスラエル人とパレスチナ人は共存できると知っている。20年にわたり、パレスチナとヨルダン、エジプトのパートナーと仕事をしてきた」と話した。
イスラエルの人々は、昨年のハマスの攻撃で心に傷を負った。多くの人は、パレスチナ人との和解はもはや不可能だと考えている。
だがイノンさんは、前進するには「過去を許し、今を許し(中略)、そして未来を築くために惜しみない努力をしなければならない」と話す。
国際社会に対しては、過去に北アイルランドや南アフリカで和解を呼び掛けたように、「平和に投資してほしい」と訴えた。【翻訳編集AFPBBNews】
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