焼失の七重塔は約70メートル=東塔の復元案公表―東大寺
奈良文化財研究所は25日、8世紀半ばの奈良時代に建てられ、焼失した東大寺の東塔(七重塔)について、高さ約70メートルだったとする復元案を公表した。明治時代以降、100メートルだったとする説との間で論争があったが、文献などを精査した結果、江戸時代に根拠となる数値が書き改められていたことを突き止めたという。
奈良時代の東大寺には大仏殿の南に東西2基の七重塔があり、東塔は764年ごろに創建。1180年の平氏軍による南都焼討でいったん焼失し、鎌倉中期に再建されたが、南北朝時代の14世紀に落雷で再び焼け落ちた。その後の再建は未完に終わり、現在では礎石も失われている。
同研究所は東大寺から委託を受け、2018年から実現可能な復元案を示すための調査を実施。遺構の発掘や文献史料の調査などを進めていた。
同研究所によると、高さが記載された四つの史料について各種写本を分析した結果、100メートル説の根拠となった「33丈余」の記載は、江戸後期の国学者、伴信友が書き改めたもので、元は「23丈」だったと判明。現存する他の塔などと比較して約70メートルの復元案を作成し、構造解析の結果、実現も可能と結論付けた。
同研究所の箱崎和久・都城発掘調査部長は「1世紀にわたる論争に一つの区切りが付いた。(約70メートルでも)創建時は国内最大級だったと推測できる」と話した。
東大寺は「これまでの復元案とは異なる姿を示すもので、天平の東塔の姿が知りたいという思いに一つの答えをいただいたと受け止めている」としている。
[時事通信社]
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