約100年ぶりに公開されたクリムト晩年作、競売へ
【ウィーンAFP=時事】オーストリアの画家グスタフ・クリムトの晩年の作品で、1925年以来実物が確認されていなかった肖像画「リーザー嬢の肖像」が24日、首都ウィーンで競売に掛けられる。ただし、作品の来歴については、広範な調査にもかかわらず、1960年代に現所有者の手に渡るまでの経緯は不明なままだ。≪写真はウィーンの競売会社「キンスキー・アート・オークションハウス」で公開されたグスタフ・クリムトの絵画「リーザー嬢の肖像」≫
未完で署名のないこの作品は、クリムトが亡くなる直前の1917年に、裕福なユダヤ人実業家リーザー家の依頼で描かれた。1925年にウィーンの展覧会に出展されて以来、実物が確認されていなかったが、今年に入り、ウィーンの競売会社キンスキーがオークション開催を発表して公開した。
キンスキーでは落札価格を3000万~5000万ユーロ(約50億~83億円)と予想しているが、クリムトの作品が市場に出回ることはまれで、最近の落札傾向から考えれば、さらに高額もあり得るという。
この肖像画は保存状態が良く、競売に先立ち、スイス、ドイツ、英国、香港でも公開されてきた。
制作のためにクリムトのアトリエを9回訪れたというモデルは、リーザー家の女性とされるが、謎に包まれている。
芸術家のパトロンで、リリー・リーザーの名前でも知られたヘンリエッテ・リーザーの2人の娘、ヘレーネとアニーのいずれかの可能性もあるが、1960年代に出版されたクリムト初のカタログには、リーザーのめい、マルガレーテと記されている。
リーザーはナチス・ドイツによる占領後もウィーンにとどまり、1942年に強制移送され、1943年にアウシュビッツ・ビルケナウ強制収容所で殺害された。
その後、この作品はナチスの貿易業者が所有し、その娘の死後、遠縁の親戚の元に渡った。現在の所有者が相続前に美術法を専門とする弁護士に法的助言を求めたことで、再び表舞台に出てくることとなった。
絵画がナチスに押収されていた場合には、裏側にナチスの秘密警察ゲシュタポのスタンプが押されているが、この肖像画には「スタンプもステッカーも一切ない」という。【翻訳編集AFPBBNews】
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