過去5年で「ヒンズー国家」化進展=モディ政権2期目、少数派は危機感―インド
【ニューデリー時事】インドのモディ政権は2期目の過去5年間で、多数派のヒンズー教徒の利益に沿った政策を次々に実行し、政教分離や多様な宗教を尊重する「世俗国家」から「ヒンズー国家」色を強めた。19日に投票が始まった総選挙で、少数派のイスラム教徒の有権者は危機感を募らせている。
「モディ首相や与党は、ヒンズーとイスラムの分断にしか焦点を当てていない。そのせいで両信者間に調和が生まれない」。北部ウッタルプラデシュ州ラームプルで同日、投票に向かっていたイスラム教徒の男性(27)はそうこぼした。ラームプルにはイスラム教徒が多く住む。
政府は3月、かねてイスラム教徒に対し「差別的」との批判があった改正国籍法の施行を発表した。パキスタンやバングラデシュなど近隣のイスラム圏3カ国での宗教的迫害から逃れてきた不法移民に市民権(国籍)を与える内容だが、対象はヒンズー教徒やシーク教徒らで、イスラム教徒は含まれていない。
1月には同州アヨディヤのモスク(イスラム礼拝所)跡地に、政府が事実上主導しヒンズー教寺院を建設した。式典に出席したモディ氏は「民族意識の(結実した)寺院だ」と演説。同氏は与党インド人民党(BJP)の支持母体であるヒンズー至上主義団体・民族義勇団(RSS)出身だ。
同地にあったモスクは1992年、「ヒンズー教寺院の跡地に建てられた」と主張する過激派に襲撃され破壊。寺院の「再建」はBJPの長年の公約だった。
2019年には、国内で唯一イスラム教徒が多数派だった北部ジャム・カシミール州の自治権を剥奪。二つの連邦直轄地に分割した。
ヒンズー国家化が進む中、地元の作家ジヤ・ウス・サラム氏は米誌タイム(電子版)への寄稿で「私たちイスラム教徒は2億人いるが、今日のインドで目に見えない存在となっている」と疎外感を表した。
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