平和の象徴ボノボ、実は「ワル」がもてる? チンパンジーと比較研究
【ワシントンAFP=時事】霊長類の中でも人類に最も近いボノボとチンパンジーは、よく「平和を愛するボノボ」、「攻撃的なチンパンジー」といった具合に対照的に語られる。≪写真は、ベルギーのメッヘレン近郊にあるプランケンデール動物園で撮影されたボノボ≫
だが、実はボノボの雄はチンパンジーの雄よりも1対1のけんかをする頻度が高く、よくけんかをする雄ほど交尾率が高いとする研究結果が11日、米科学誌カレント・バイオロジーに11日発表された。
論文の筆頭著者を務めた米ボストン大学のモード・ムジェノ氏は、先行研究でボノボの雄の間に「繁殖の偏り」、すなわち子どもの数に大きな差があることが判明し、ボノボの攻撃性について調査を行ったと話す。
研究チームはコンゴ民主共和国のココロポリ・ボノボ保護区の三つのボノボコミュニティーと、タンザニアのゴンベ国立公園の二つのチンパンジーコミュニティーに焦点を当てた。ボノボとチンパンジーはDNAの99.6%が共通している。
そしてボノボの雄12頭、チンパンジーの雄14頭の行動を2年間にわたって追跡し、それぞれが攻撃的になる頻度、相手、状況などについてデータを収集した。
その結果、予想に反してボノボの雄の方が、チンパンジーよりも高い攻撃性を示すことが判明。敵対的な交渉は2.8倍、身体的なけんかは3倍の割合で起きていた。
ムジェノ氏によるともう一つ、ボノボではより攻撃的な雄の方が、『性皮最大腫脹(しゅちょう)』と呼ばれる状態にある排卵期の雌との交尾を勝ち取っていた。
■けんかをする姿が魅力的?
チンパンジーの雄は雌に対して攻撃性を示す傾向が強かったのに対し、ボノボの雄はほぼ他の雄にしか攻撃性を示さなかったのは予想通りだった。
チンパンジーは極めて雄優位社会で、雄が団結して雌に交尾を強要することもある。一方、ボノボはしばしば雌が群れのリーダーで、交尾を強要しようとする雄に対しては、雌同士が連帯して阻止しようとする。
またチンパンジーの雄のけんかは複数が関わり、群れの中、あるいはライバルの群れとの縄張り争いで、死ぬこともある。けんかのコストが大きいということでもあり、そのため頻度が少ないのかもしれない。
一方、ボノボの雄のけんかは圧倒的に1対1が多い。またボノボが殺し合いをしたという報告はこれまでにない。
「素行がいい」雄の方が交尾できないという点については、「攻撃的な雄ほどライバルを負かし、より多くの時間を雌と過ごすことができるということが関係している可能性はある」とムジェノ氏はいう。
ただし、「ワルっぽい」男性の方が女性を魅了する傾向があるという人間での見方が、そのままボノボに当てはまるかどうかについては、ムジェノ氏は懐疑的だ。
雌のボノボの力は絶大で、雄の攻撃性が自分たちに向けられたときは容赦なく封じ込めるが、それが他の雄に向けられた場合には魅力的に映るのかもしれないとムジェノ氏は述べた。【翻訳編集AFPBBNews】
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