裁判官、罷免に慎重意見=識者「萎縮効果与える」―岡口判事弾劾
岡口基一判事のSNS投稿を巡り、現役裁判官からは投稿内容に批判の声が上がる一方、罷免とすることに対しては慎重な意見が目立った。判決を受け、識者は「現役裁判官の表現活動に萎縮的効果を与えるだろう」と指摘した。
「殺人事件の遺族を傷つけ、とんでもないことをした。人の痛みが分からなければ裁判官は務まらない」。あるベテラン裁判官はこう非難する。裁判官のSNS発信は禁止されていないが、「担当する裁判の関係者と関わってしまう可能性がある。中立性を保つためにも利用しない方が賢明だ」と話した。
一方、別の裁判官は「過去に罷免されたのは刑事事件になったようなケースで、SNS投稿とは次元が違う」とした上で、「表現行為で罷免されては現場が萎縮する。政治の不当な介入にもつながる」と懸念を示す。ある若手裁判官も、最高裁が訴追請求せず内部処分にとどめたことを挙げ、「罷免となれば行き過ぎだ」と語った。
岡口判事の罷免については、表現の自由や裁判官の独立といった観点から法曹界を中心に反対意見が根強かった。東京、仙台、福岡など多くの弁護士会が声明を出したほか、学者や元裁判官らも罷免しないよう求めていた。
立命館大の市川正人特任教授(憲法)は「投稿の意図よりも遺族感情を傷つけたという結果を過大に重視した判断だ」と分析。裁判官としての威信を著しく失うほどの非行に当たるかの説明が尽くされておらず、「国会議員が胸三寸で裁判官を追放できることになってしまいかねない」と懸念を示した。
[時事通信社]
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