トランプ2.0、日本企業備えは=保護主義加速、脱炭素逆行も―米大統領選
米大統領選は、民主党のバイデン大統領と共和党のトランプ前大統領が再戦する構図が固まった。世論調査では、トランプ氏が支持率でバイデン氏を上回り、再登板は十分にある。再選されれば、輸入品の関税引き上げなど保護主義の加速や、バイデン氏が推進してきた脱炭素化の逆行が懸念される。日本企業は「トランプ2.0(第2次トランプ政権)」への備えが必要だ。
「関税の戦いがまた起こる」。サントリーホールディングス(HD)の新浪剛史社長は身構える。トランプ氏は全輸入品に10%、対中国では60%の関税をかけると発言。日本製紙連合会の加来正年会長(王子HD会長)は、中国経済の減速を懸念し「中国が転ぶと日本もこけてしまうかもしれない」と話した。
トランプ氏は、電気自動車(EV)への税優遇を盛り込んだインフレ抑制法(IRA)などバイデン氏の脱炭素政策を、米雇用に「壊滅的だ」と真っ向から否定、政策転換を宣言する。
米国にEV用電池工場を持つパナソニックHDは今年度、米政府の支援策による営業利益押し上げ効果を850億円と見込む。トヨタ自動車などEV需要増を見込んで米国で追加投資を決めた企業もある。国内大手証券マネジャーは「方針変更で恩恵がなくなる可能性もある」と指摘する。
一方、バイデン氏再選でも、程度の違いはあれ、保護主義的な傾向に変化はないとの見方もある。同氏は政府に米国産品の調達を義務付ける「バイ・アメリカン政策」を強化。日本製鉄による同業のUSスチール買収を巡っては、「瞬時に阻止する」と気勢を上げるトランプ氏に対し、バイデン氏も買収に反対する全米鉄鋼労働組合(USW)を支持しているとされる。
元駐米大使の藤崎一郎氏は「大事なことは今、トランプ2.0について不安や懸念を騒ぎ立てないことだ」と話す。同氏は「トランプ氏の1期目では選挙前の公約の実行率は約5割だった」と指摘。日本は「関税の一律引き上げが米国経済にも悪影響を与えることや世界貿易機関(WTO)の重要性を、静かにトランプ氏に訴えるとともに、国際機関の必要な改革を一緒に引っ張っていく心構えを持つべきだ」と強調した。
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