守れ能登の酒=震災で窮地―寄付や製造代行、広がる支援
能登半島地震で被災した酒蔵を救おうと支援の輪が広がっている。被害が甚大だった奥能登地域は酒所で知られ、創業100年以上の歴史がある老舗ぞろいだ。直面する存続の危機に、愛好家は寄付金を呼び掛け、同業者は製造代行に立ち上がった。
能登の酒造り職人は日本四大杜氏(とうじ)に数えられる。醸し出される濃厚で華やかな味わいは左党に愛されてきた。石川県酒造組合連合会によると、輪島市、珠洲市、能登町にある11の加盟酒造会社すべてが被災し、多くが全半壊状態だ。裏谷重寿専務理事は「今期の仕込みを断念したところが多い」と語る。
過酷な状況の中でも、地域の伝統や誇りを象徴する酒造りの再建を模索する動きが出始めた。同連合会は、県内で難を逃れた酒蔵の日本酒に統一ラベルを貼り付けて販売し、利益の一部を被災蔵元へ贈る企画を進める。無事だった在庫の管理や瓶詰めの引き受けなどへの協力も加盟会社に求める。金沢市で酒屋を営む田鶴浩康さんは「応援する人が数多くいると伝えている。つらいだろうが頑張ってほしい」と励ます。
インターネット上では寄付金募集も始まった。日本酒に特化したクラウドファンディングサービス「SAKEクラファン」には25日夕までに約680万円が集まった。このサービスを運営する増田雅人さんは「多くの反響があり、海外からも寄付があった」と話す。東京・上野の関矢酒店は、宗玄酒造(珠洲市)の酒が看板商品の一つ。関矢邦彦さんは「代わるものはない。次の出荷まで冷蔵ケースの棚は空けておきたい」と復活を信じる。
宮城県大崎市の酒造会社、新沢醸造店は数馬酒造(能登町)と白藤酒造店(輪島市)から日本酒のもと「もろみ」を引き受け、酒を瓶詰めした。新沢醸造店は東日本大震災で蔵が全壊する被害を受けており、能登の酒蔵が置かれた厳しい状況を身をもって知る。新沢巌夫代表取締役は自身が被災した際、同業者に助けてもらったと振り返り、「必ず復活できると信じている。諦めないでほしい」とエールを送った。
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