地下の流体上昇で誘発か=東京ドーム23個分が存在―能登地震
最大震度7を観測してから1週間が経過した能登半島地震では、地下深くから上昇した正体不明の流体が大きな活断層に入り込んだことでマグニチュード7.6の地震が誘発された可能性が指摘されている。能登半島の地下には東京ドーム23個分に相当する流体があるとされており、専門家は「流体の動きによっては、今後も地震が起きる恐れがある」として注意を呼び掛けている。
今回の震源域では2020年12月ごろから断続的な群発地震が活発化していた。京都大防災研究所の西村卓也教授(測地学)は「流体が能登半島の地下十数キロまで上昇し、付近にある断層内に流れ込んで刺激したことで群発地震を引き起こしていた」と指摘。「流体の影響がひずみを蓄えていた大きな断層にまで及んだ結果、今回の地震が誘発された」と分析する。
流体は、海水を含む太平洋プレートと一緒に日本列島の下へ沈み込む中でプレートから分離し、地下の浅いところに上昇してくるとされる。詳細は解明されていないが、上昇した流体が断層を圧迫したり、断層面を滑りやすくしたりすることで地震を引き起こすと考えられている。西村教授らの研究によると、22年6月までに約2900万立方メートル(東京ドーム23個分)の流体が、能登半島の地下16キロまで上昇していたことが分かったという。
西村教授は上昇の要因として東日本大震災に言及。「東日本地域はこれまで、東西方向からプレートが押し合う力がかかっていたが、大震災によってその力が弱まり、流体が能登半島の地下にある割れ目をつたって上昇しやすくなった可能性もある」と推測する。
流体の詳細は不明だが、能登半島の周囲に火山はないため、マグマの可能性は低いとみられている。
流体は今後どう動くのか。西村教授は「現時点では分からないが、地震に伴って流体が海底まで上がって噴出している可能性もあれば、まだ地下の深い所にとどまっている可能性もある」と指摘。
その上で「能登半島北部では大地震を起こすような断層のひずみは解消されたのではないか。ただ、流体が地下深くにとどまっていれば、今後も中小規模の地震が続く可能性は高い」としている。
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