2023-11-28 19:44政治

保有国債、含み損10.5兆円=金利上昇で過去最大―日銀中間決算

日銀の保有国債含み損益推移
日銀の保有国債含み損益推移

 日銀が28日発表した2023年9月中間決算で、保有する国債の含み損が過去最大の10兆5000億円となった。大規模金融緩和策の一環として実施している長短金利操作の運用柔軟化を受け、長期金利が上昇(債券価格は下落)し、3月末の1571億円から急拡大した。
 日銀は国債の満期保有を前提とした会計処理を採用しているため、含み損は決算に反映されない。含み損が拡大しても「政策運営能力に支障が生じることはない」(植田和男総裁)と説明する。ただ、日銀の財務状況への不安が高まれば、債券・為替市場に影響を及ぼす恐れもある。野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは「巨額の含み損の発生は、金融政策や通貨の信頼性を損ねるリスクを抱えている」と指摘する。
 日銀は7月の金融政策決定会合で長期金利の変動許容幅の上限を0.5%から事実上1%に引き上げた。長期金利の指標となる新発10年物国債利回りは3月末時点の0.3%台前半から9月末には0.7%台後半に上昇。保有国債の時価が簿価を下回り、評価損が拡大した。9月末時点の国債保有残高は前年同期比7.6%増の586兆8781億円と過去最大を更新した。 
 今後、マイナス金利政策を解除して、利上げを進める場合、金融機関が日銀に預け入れた当座預金への利払い負担が増し、財務の悪化リスクは高まる。このため、日銀は9月中間決算でも債券取引損失引当金を2878億円積み増すなど、自己資本を拡充。植田総裁は「財務リスクに注目が集まると、政策をめぐって無用な混乱が生じる。財務の健全性を確保するのは重要だ」と強調している。
 一方、企業の純利益に相当する当期剰余金は1兆9282億円(前年同期は1兆5924億円)で過去最高となった。大規模緩和下で買い入れた上場投資信託(ETF)の運用益が膨らんだほか、国債の利息収入が増えたことなどが寄与した。

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