米石油業界、相次ぐ大型買収=底堅い需要、脱炭素曲がり角
【ニューヨーク時事】米石油業界では、収益強化をにらんだ大型M&A(合併・買収)が相次ぎ、脱炭素の取り組みが曲がり角を迎えている。エクソンモービルとシェブロンは先月、それぞれ日本円で8兆円規模の巨額資金を投じ、米同業の買収を発表。新興国の経済成長などによる底堅い石油需要を見込み、大型投資に踏み切っている。
米エネルギー情報局(EIA)によると、2050年の石油消費量は22年比2割増の日量1億2150万バレルに膨らむ見通し。日米欧などが50年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロとする目標を掲げる中、太陽光など再生可能エネルギーの導入促進だけでは、需要を賄い切れないと見込んでいる格好だ。
エクソンが買収するのはシェールオイル産地として知られる米南部に権益を持つパイオニア・ナチュラル・リソーシズ。買収額は595億ドル(約8兆9000億円)で、99年のモービルとの統合後、最大の案件となる。英調査会社ウッドマッケンジーは「買収は石油需要への強気の見方を示している」と指摘した。
シェブロンも530億ドル(約8兆円)を投じ、南米の新興産油国ガイアナなどで石油を生産する米ヘスを買収。供給体制強化へ調達先の多角化を急ぐ。
国際再生可能エネルギー機関(IRENA)の調べでは、世界全体の化石燃料の投資額(22年)は9530億ドル(約143兆円)とコロナ禍前の水準を回復した。ロシアのウクライナ侵攻に伴うエネルギー価格の上昇が要因。投資拡大が続けば、脱炭素目標の形骸化は避けられない。
一方、エクソンは脱炭素に欠かせない電気自動車(EV)用電池の製造に使われるリチウム生産に乗り出す。環境負荷軽減に取り組む姿勢を示すことで、M&Aへの批判をかわす思惑がありそうだ。
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