経済振興も薄れる宗教文化=国旗はためく観光地に―中国新疆・カシュガル
【カシュガル時事】中国新疆ウイグル自治区で、少数民族のウイグル族が人口の8割を占めるカシュガル市。2009年には、事前に警察に排除されたものの、この地でも大規模な騒乱の動きがあった。現在は街の各所に中国国旗がはためき、漢族の観光客が集まる。懐柔策として経済振興が進められる一方、住民には宗教より共産党への忠誠が求められ、イスラム教の文化は薄れている。
6月下旬のカシュガル旧市街は、ドライフルーツや民族衣装など土産物を求める漢族の観光客でにぎわっていた。ウイグル族の店主に店先の国旗について尋ねると「ここは中華人民共和国だから」と割り切った様子。別の40代男性は漢族との関係についての問いに「中華民族は一つの家族だ」と言い切った。
習近平政権は、医療や教育、住宅など集中的な経済支援で豊かさを実感させ、少数民族の不満を抑えることで社会の安定を図っている。カシュガルで暮らすウイグル族の中でも、「観光客は多く、商売繁盛だ」(23歳のタクシー運転手男性)、「ここ2、3年の発展は本当に速い。経済が発展するのはいいこと」(22歳の雑貨店女性)といった声が聞かれる。
経済発展と漢族への同化政策に伴い、宗教色は薄まっている。1日5回のアザーン(礼拝呼び掛け)は流れず、モスク(イスラム礼拝所)も激減した。民族の伝統料理を提供する店の店主は「(アザーンは)禁止されている。モスクもずいぶん減った。漢族化(中国化)が進んでいる」と静かに語った。
習政権の政策が支持を得て成功しているかは不透明だ。カシュガルの歴史を伝える博物館では、党員バッジを着けたウイグル族の女性らが熱心にガイドの解説に耳を傾け、そうした自分たちの様子を交代で写真に収めていた。展示されているのは、「新疆は中国領土の不可分の一部」「新疆各民族は長年、中華民族の家族の一員」といった共産党のプロパガンダ。見学者らは、身の安全を守るために党への忠誠を示している側面もありそうだ。
一方、習政権の同自治区での取り組みを紹介するコーナーは、地下1階にひっそりと設けられていた。ここだけガイドがなく、写真撮影も禁止。同化政策を進めつつも、民族感情を過度に刺激したくないという習政権の微妙なさじ加減が垣間見えた。
[時事通信社]
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