コロナ不況、２番底の懸念　カギ握る早期収束―４～６月期ＧＤＰ

　２０２０年４～６月期の実質ＧＤＰ（国内総生産）速報値は、年率換算で２７．８％減と戦後最悪の落ち込みとなり、新型コロナウイルス感染拡大による経済的打撃の深刻さを浮き彫りにした。外出自粛に伴う消費の低迷から外食や観光などサービス業を中心に日本経済はかつてない苦境に直面。感染再拡大が止まらなければ、景気は秋に「２番底」に向かう恐れがある。
　◇窮地の居酒屋
　「感染が早期収束するか、一段の政府支援がなければ、このまま店を続けるのは厳しい」。東京・新橋の居酒屋「健美」を営む荒井勢一さん（７０）は遠のいた客足に頭を抱える。
　緊急事態宣言の出ていた４～５月に休業し、７月上旬に売り上げはいったん前年の５割程度まで戻った。しかし、感染再拡大を受け今月３日から夜１０時までの営業短縮要請を受け入れ、状況は一変。通常３０万円を超える１日当たり売上高が８月に入って５万円まで落ち込み、従業員の給与すら賄えない窮地が続く。国から中小事業者を支援する持続化給付金２００万円を支給されたが、荒井さんは「焼け石に水」と嘆く。
　◇サービス消費が蒸発
　４～６月期ＧＤＰでは、内需の柱である個人消費が比較可能な１９８０年以降で最大の下げ幅を記録。外出自粛や店舗休業で宿泊や飲食、旅客、娯楽などのサービス消費が蒸発した。
　埼玉県秩父市の温泉旅館「ゆの宿　和どう」では４、５月に宿泊客数が例年と比べ８～９割減少。町田啓介社長（６７）は「２～３割減なら経営努力でしのげるが、（大幅減に）耐え忍ぶ方法を懸命に考えた」と話す。８月に入り客足は戻ったが「９月以降どうなるのか全く分からない」と不安を募らせる。
　経済活動再開と感染防止の両立をどう図るか。政府の対応も揺れ、７月２２日にスタートした観光需要喚起策「Ｇｏ　Ｔｏ　トラベル」キャンペーンは混乱を招いた。東京都を発着する旅行は適用除外となり、「需要創出効果は当初の６割程度の可能性がある」（第一生命経済研究所の永浜利広首席エコノミスト）。ＪＲ東日本の赤石良治常務は、７月２３日からの４連休でも「旅客需要は伸びなかった」と表情を曇らせる。
　ＧＤＰでは輸出とみなされる訪日外国人旅行者（インバウンド）消費も激減。訪日客「２０年に４０００万人」を目指した安倍晋三政権にとって大きな痛手となった。
　◇秋以降マイナス成長も
　コロナ禍で世界経済は歴史的な後退局面に陥り、外需の早期回復への望みは薄い。「感染第２・第３波も予想され、回復の道のりは容易ではない」（三菱自動車の加藤隆雄最高経営責任者）と「Ｖ字回復」への期待はしぼんでいる。
　現在は持続化給付金や無利子・無担保の公的融資などで倒産件数の急増は抑えられている。しかし、景気回復の遅れは事業者の体力をむしばみ、失業者が急増すれば、景気を一段と下押ししかねない。
　多くの民間エコノミストは、７～９月期実質ＧＤＰが年率１０％を超えて持ち直すと予想している。しかし、新型コロナが収束せず経済停滞が長引けば「１０～１２月期に再びマイナス成長に陥る」（三菱ＵＦＪリサーチ＆コンサルティングの小林真一郎主席研究員）との懸念は現実味を帯びる。（2020/08/17-19:44）

The resurgence of novel coronavirus infections is raising fears of a double-dip recession in Japan, which has just seen the biggest economic contraction in the postwar period.
   The country's real gross domestic product for April-June fell an annualized 27.8 pct from the previous quarter to mark the worst performance in the postwar period, according to data released by the Cabinet Office on Monday.
   The service industry, particularly dining and tourism businesses, is facing unprecedented hardships as demand evaporated due to trends to stay home.
   A further spread of the virus is expected to worsen the situation.