特措法、揺れた国・自治体 権限の所在あいまい―知事から見直し論・緊急事態3カ月
安倍晋三首相は4月、新型コロナウイルスに関する対応策として、「改正新型インフルエンザ対策特別措置法」に基づく緊急事態宣言の発令に踏み切った。速やかな具体策への移行が期待されたが、国と都道府県は主導権争いで揺れた。特措法の運用に当たり、権限の所在にあいまいさが常につきまとったためで、全国知事会からは法律の見直し論が出ている。
◇消えた解説書
新型コロナの国内感染が本格化した2月以降、霞が関周辺の書店や図書館の棚からある本が軒並み姿を消した。
「逐条解説 新型インフルエンザ等対策特別措置法」。入手に走ったのはコロナ対策に当たる官僚ら。特措法担当の西村康稔経済再生担当相も国会審議などへ携行し、装丁はすぐに傷んだ。
特措法は緊急宣言を受け、(1)外出の自粛要請(2)店舗などへの休業要請・指示―などを可能とする。ただ、実際には法令の扱いにたけた官僚ですら、「どう運用すればいいのか分からなかった」(政府関係者)のが実情だった。
特に難しかったのは国と地方の関係。休業要請などを出すのは知事と定められているのに、国にも「総合調整」権限が付与されていた。混乱は宣言発令前に表面化した。
「もう都議会に根回ししているんですよ」。宣言発令3日前の4月4日夜。東京都の小池百合子知事は西村氏に電話で、都が準備中の休業要請についてこう訴えた。
都は当初、宣言発令と同時にデパートやホームセンター、居酒屋を含む幅広い業種への休業要請を検討。だが、国は市民生活の混乱や近隣県との調整不足などを危惧し、これに待ったをかけた。
結局、都が休業要請を公表したのは宣言発令後の4月10日。当初案の縮小を強いられた小池氏は記者会見で「社長と思ったら中間管理職になった感じ」と当てこすった。
◇揺れる軸足
政府関係者は当時を「どこまで言い分が通るか冷や汗ものだった」と振り返る。国と都の対立を受け、宣言発令に合わせて特措法に基づく基本的対処方針を改定し、自治体の措置は「あらかじめ国と協議」するとし、裁量に縛りをかけた。
ところが、西村氏は5月、大阪府の吉村洋文知事に「休業の要請・解除は知事の裁量」と指摘。あえて対処方針を改定しながら、権限に伴う責任を自治体に押し付けるようにも映った。政府の軸足がぶれた瞬間だった。
各知事からは権限の所在に関する線引きの見直しの機運が高まる。知事会は今月19日、休業要請などへの知事権限強化を求める提言をまとめた。
これを実践するように小池都知事は今月下旬の4連休を前に「不要不急の都外への外出」自粛を都民に呼び掛けた。政府肝煎りの「Go To トラベル」開始を目前に控えた菅義偉官房長官は西村氏に「何とか修正させろ」と指示したが調整は不調で、今度は小池氏が押し切った格好となった。
政府高官は「特措法の解説書を読んでも『畳の上の水練』だった。その都度、総合調整の中身を判断せざるを得なかった」と明かし、「どの範囲まで国は知事に強制できるのか、仕切りを明確にする必要があるかもしれない」と語った。(2020/07/29-07:23)
FOCUS: Coronavirus Response Marred by National-Local Standoff
Japanese Prime Minister Shinzo Abe's declaration of a state of emergency over the coronavirus epidemic in April heightened expectations that detailed measures could be taken swiftly to handle the crisis.
Such expectations were quickly dashed, however, as the declaration, made under the revised special measures law to deal with the epidemic, led to a tug of war between the central government and the country's 47 prefectures over who has the authority to implement prevention measures.
Prefectural governors are now proposing that the law be revised again to resolve the confusion.
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